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「話そうとすると、口や舌が思うように動かない」
「食べようとすると、顎や舌に力が入って変な動きが現れる」
そんな違和感を感じながらも、
「気のせいかもしれない」
「顎関節症と前に言われたし、そのせいかな」
と、そのままにしていませんか。
実際に、顎口腔ジストニアの症状は、最初はちょっとした違和感から始まることが多く、はっきりとした原因がわからないまま、少しずつ日常生活に影響が出てくるケースもあります。
病院で相談しても、
「異常はありません」
「様子を見ましょう」
と言われてしまい、「この状態はどうすればいいのか」と悩まれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
顎や口、舌の問題は、一見すると筋肉や噛み合わせの問題のように感じられますが、実際には脳や神経の働き、そして無意識の反応や習慣が関係している可能性もあります。
この記事では、顎口腔ジストニアの症状や原因、病院の選び方といった基本的な内容に加えて、
・なぜ思い通りに動かせなくなるのか
・なぜ同じ場面で症状が出るのか
といった部分についても、脳や神経の働きという視点からわかりやすく解説していきます。
さらに、ご自身でできるセルフケアについてもご紹介していますので、「まずは自分でできることから始めてみたい」という方は、ぜひ最後までご覧ください。
顎口腔ジストニアとは?|症状と難病としての位置づけ

顎口腔ジストニアは、顎や口、舌の筋肉が自分の意思とは関係なく動いてしまう疾患で、うまく動かそうとしても力が入りすぎたり、逆にコントロールできなくなったりするのが特徴です。
最初は違和感程度だったものが、気づけば
・常に意識してしまう
・食べにくい
・話しにくい
といった形で、日常生活に影響が出て、つらさを感じるようになってしまいます。
実際には、
・顎が勝手に開く、閉じる、横にずれる
・舌が前に出る、丸まる、動かしづらい
・口がうまく閉じられない
・食べ物を噛みにくい、飲み込みにくい
・話しているときに口や舌が思うように動かない
といった症状として現れることが多くあります。
また、常に症状が出ている方もいれば、「話そうとしたとき」「食べようとしたとき」など、特定の場面で強く出ることがあるのも特徴です。
顎口腔ジストニアは難病なのかと不安に感じる方も多いと思いますが、ジストニアにはいくつかのタイプがあり、その中でも遺伝性ジストニアなどが難病に含まれます。そのため、顎口腔ジストニアがすべて同じ扱いになるわけではありません。
ただ、実際には原因がはっきりしないケースも多く、
「どこに行っても改善しない」
「何が起きているのかわからない」
と悩まれている方が多いのも現実です。
また、「改善は難しい」と言われてしまうケースもあると思います。
日常の動作に影響が出た状態で、長い方では何年、何十年と悩み続けている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そうすると生活そのものを楽しめなくなってしまい、常にストレスがかかり、かなり苦しく、つらい症状だと施術を通して感じます。
【セルフチェック】顎口腔ジストニアの可能性を確認

「もしかして自分も当てはまるかもしれない」と不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
まずは、現在の状態を整理するために、ご自身に当てはまるものがあるか確認してみてください。
以下の項目の中で、複数当てはまるものがある場合は、顎口腔ジストニアの可能性も考えられます。
いくつか当てはまる場合でも、必ずしも顎口腔ジストニアと断定できるわけではありませんが、体の中で何らかのコントロールの乱れが起きている可能性は考えられます。
特に、「思い通りに動かそうとしてもうまくいかない」という感覚がある場合は、単なる筋肉の問題ではなく、神経の働きが関係しているケースもあります。
一方で、「少し違和感がある程度だから大丈夫」とそのままにしてしまうと、もしかすると少しずつ症状が強くなってしまうこともあります。
ジストニアの初期症状が気になる方は、ジストニアの初期症状|原因・心因性と思い込みの違い・生活でできるケアの記事も併せてお読みください。
大切なのは、「気のせい」で終わらせずに、しっかりと今のご自身の状態に目を向けることです。
次の章では、実際にどの診療科を受診すればよいのか、どのように判断していけばよいのかについて解説していきます。
顎口腔ジストニアは何科に行けばいい?|病院の選び方

セルフチェックでいくつか当てはまる項目があった場合、「どこに行けばいいの?」と感じる方もいると思います。
顎口腔ジストニアが疑われる場合は、
・歯科
・口腔外科
・神経内科
といった診療科を受診するのが一般的です。
歯科や口腔外科では、噛み合わせや顎の構造に問題がないかといった観点から診察が行われます。
歯科は比較的身近にあるため、まずはお近くの歯科医院で相談してみるのが、取りかかりやすく現実的かと思います。
そこで特に問題がないと言われた場合には、口腔外科でより詳しく診てもらったり、神経内科の受診を検討してみましょう。
神経内科では、脳や神経に関する異常がないかを確認し、ジストニアなどの可能性について評価や判断が行われます。
ただし、顎口腔ジストニアは比較的専門性の高い分野でもあるため、どの医療機関でも十分に対応できるとは限らないのが現状です。
そのため、
「異常はないと言われた」
「様子を見ましょうと言われたが改善しない」
といったケースも少なくなく、原因や状態がはっきりしないまま悩まれている方もいらっしゃいます。
このような場合は、一つの医療機関だけで判断するのではなく、セカンドオピニオンとして別の医療機関で相談してみることが、改善に近づく一歩になるはずです。
また、症状の伝え方や内容によっては、精神的な要因やストレスによるものと判断され、心療内科を勧められるケースもあります。
たとえば、
「歯が全部倒れてしまうような感覚がある」
「すべての歯がグラグラしているように感じる」
といった訴えの場合、身体的な異常が見つからないと、精神的な問題として捉えられることもあります。
まずは医療機関で、構造的な問題がないかを確認することが大切です。
ただ、それだけでは改善につながらないこともあると思います。
大切なのは、「どこに行っても変わらなかった」という経験だけで諦めてしまうのではなく、自分の体で何が起きているのかを多角的な視点から見て、改善につながるヒントを掴んでいくことです。
顎口腔ジストニアの原因と治療|西洋医学の考え

顎口腔ジストニアの原因については、現在の西洋医学でもはっきりと一つに特定されているわけではなく、いくつかの要因が関係していると考えられています。
その中でも中心的に考えられているのが、「脳の働きの異常」です。
特に、運動のコントロールに関わる大脳基底核と呼ばれる部分の機能に問題が生じることで、筋肉の動きをうまく調整できなくなるとされています。
大脳基底核は、無意識のうちに体の動きを調整する役割を担っています。
たとえば今、スマホを持って見ているときも、手の力加減や腕の角度は「見やすい位置」に自然と保たれていると思います。こうした無意識の調整がうまく働くことで、私たちはスムーズに体を動かすことができています。
しかし、この無意識のコントロールのバランスが崩れることで、
・必要以上に力が入ってしまう
・力を抜きたいのに抜けない
・思い通りに動かせない
といった状態が起こると考えられています。
また、原因としては他にも、
・薬の副作用(抗精神病薬など)
・外傷や神経の障害
・同じ動作の繰り返し(反復動作)
・歯科治療(抜歯・入れ歯・噛み合わせの変化)
・過度なストレス
など、複数の要因が重なっている可能性があるとも言われています。
ただ実際には、はっきりとした要因が特定できないケースもあり、「なぜ起きているのか分からない」というパターンが多いように思います。
そのため、検査をしても明確な異常が見つからず、「様子を見ましょう」と言われたり、「付き合っていきましょう」というケースも少なくないはずです。
そしてこのような状態に対して、代表的な治療しては、
・ボツリヌス療法
・薬物療法
・外科的治療(筋突起切離術など)
が挙げられます。
ボツリヌス療法は、過剰に働いている筋肉に対してボツリヌストキシンを注射し、神経から筋肉への命令伝達物質(アセチルコリン)の放出を抑えることで、一時的に筋肉の働きを弱める治療です。
これにより、過度な筋肉の緊張を抑え、症状の軽減が期待できますが、効果は一定期間で薄れていくため、数ヶ月ごとに継続的な治療が必要になるケースもあります。
また、薬物療法では、筋肉の緊張を緩める薬や神経の働きを調整する薬が用いられることがありますが、効果には個人差があり、副作用とのバランスを見ながら使用されることが一般的です。
さらに、顎口腔ジストニアに特化した外科的治療として、特に閉口型で口が開きにくい重度の症例に対しては、口の中からアプローチして下顎骨の筋突起を切離する「筋突起切離術」が行われることもあります。
このように、西洋医学では「脳や神経の働きの異常」に対して、薬や注射、手術などによって、物理的に症状を抑えるアプローチが中心になります。
石井堂が考える原因と治療|脳の誤作動という視点

石井堂でも、顎口腔ジストニアを「脳や神経の働きの異常」という点では同じように捉えています。
ただ、医学的な検査を行っても明確な異常が見つからない場合、石井堂では「脳の誤作動」という視点で状態を見ています。
これは、異常な運動パターンが脳に記憶され、無意識のうちにプログラム化されてしまうことで、本来必要のない動きが繰り返し起こってしまう状態です。
このような誤作動のパターンが形成されてしまう背景には、
・緊張
・ストレス
・思い込み
・クセ
といった複数の要因が関係していると考えています。
ここでいう「クセ」とは、単に体の使い方だけではなく、無意識に繰り返している反応やパターンのことを指します。
たとえば、
・気づかないうちに片側だけで噛む癖がある
・無意識に食いしばることが習慣になっている
・常にどこかに力が入った状態が続いている
といった体の使い方のクセもあれば、
・「ちゃんとやらなければいけない」
・「失敗してはいけない」
・「こうしないとうまくいかない」
といった思考のクセもあります。
さらに重要なのは、これらの多くが「自分で選んでやっている」という感覚がないまま起きているという点です。
本来であれば、その場その場で自然に選択されるはずの体の使い方や反応が、過去の経験や習慣によって無意識の中で固定されてしまい、
「気づいたらそうなっている」
「なぜか同じ反応を繰り返してしまう」
という状態になっていきます。
つまり、「どうして今その動きをしているのか」を意識的に考えているわけではなく、無意識に作られたパターンが先に働いてしまっている状態です。
そして、その無意識の選択の積み重ねが、少しずつ体の使い方のズレを生み出し、結果として誤作動として現れてきます。
たとえば、
・気づかないうちにストレスがかかり、無意識に食いしばる癖がついていた
・無意識の緊張が抜けず、常に口元に力が入っていた
といった状態が続くことで、本来の自然な動きから少しずつズレていきます。
また、管楽器の演奏時に起こるジストニアも同じように考えることができます。
本来は「音を出す」という目的に対して自然にできていた動きが、
「こういう口の形にしなければいけない」
「この動きをしないと音が出ない」
といった意識的なコントロールを繰り返すことで、余計な緊張が口元に蓄積していきます。
その結果、「音を出す」という本来の目的から離れ、「動き方」に意識が向いてしまい、不自然な使い方が定着してしまいます。
こうして誤った運動パターンが脳に記憶され、やめようとしてもやめられない動きとして現れます。
そしてこの誤作動のプログラムが、食べる、話すといった日常の動作にも影響し、意図しない動きとして現れてしまいます。
なので、ストレスの捉え方や思考のパターンといった、「脳がどのようなことに反応しているのか」という部分も含めて見ています。
同じ出来事でも、人によって受け取り方や反応の仕方は異なります。
意識では「気にしていない」と思っていても、無意識のレベルでは負担になっていたり、ストレスとして影響していることがあります。
その結果、体は常に力が入りやすい状態になり、無意識のコントロールにも影響が出てきます。
石井堂では、このように「なぜその反応が起きているのか」「なぜその状態が続いているのか」といった背景まで含めて見ていきます。
単純に筋肉や関節だけの問題として捉えるのではなく、脳の反応や無意識のパターンまで含めて整えていくことで、結果として症状の改善につながっていくと考えています。
自宅でできるセルフケア|脳神経のつながりから整える方法
ここからは、ご自身でできるセルフケアについてお伝えしていきます。
今回は、顎口腔ジストニアに対するセルフケアとして、代表的な筋肉や神経のつながりに着目し、誤作動を整えていくための方法の一部をお伝えしていきます。
咬筋・側頭筋の緊張をゆるめる
まずは、顎まわりの緊張をゆるめるところから始めていきましょう。
顎口腔ジストニアでは、噛むときに使う筋肉が無意識に緊張していることが多くあります。
そこでまずは、咀嚼に関わる筋肉である「咬筋」と「側頭筋」をゆるめていきます。

咬筋は、耳の前からエラにかけてある筋肉で、奥歯を噛みしめたときに硬くなる部分です。

この部分を、指で軽く押しながら、上下に細かく揺らすようにマッサージしていきます。
力を入れすぎず、やさしくほぐすのがポイントです。
次に側頭筋です。
こめかみから耳の上にかけて広がっている筋肉で、ここも噛む動作に関係しています。

指先で円を描くように、ゆっくりとマッサージしていきましょう。
どちらも深呼吸をしながら行うことで、緊張が抜けやすくなります。
時間の目安としては、1〜3分程度で緩みを感じるまで行ってみてください。
今ほぐした咬筋や側頭筋は、「三叉神経」という脳神経の働きによってコントロールされています。
この三叉神経は、脳の12神経のうちの一つで、その中でも「下顎神経」という枝が、噛む動作に関わる筋肉を支配しています。

つまり、筋肉をゆるめることは、神経の働きにもアプローチしていることになります。
さらに大きな視点で見ると、これらの神経はすべて「脳幹」という部分から出ています。
細かく分けることもできますが、ここでは同じエリアから出ている神経として捉えていただいて大丈夫です。
このつながりから考えると、顎だけでなく、関連する他の神経にもアプローチしていくことで、全体のバランスを整えていくことが重要になります。
舌下神経|舌のコントロールを整える
そこで次に、舌の動きをコントロールしている「舌下神経」の働きを整えていきます。
舌下神経は、脳の12神経の一つで、舌の動きをコントロールする神経です。

食べ物をまとめたり、飲み込んだり、言葉を発したりといった動きに関わっています。
この神経の働きに偏りが出ていると、舌の動きがうまくコントロールできなくなっている可能性があります。
まずは簡単にチェックしてみましょう。
舌をゆっくり前に出したときに、舌先が左右どちらかに傾いていないかを確認します。
わかりにくい場合は何度か繰り返してみてください。
また、頬の外から手を当てて、舌で内側から押してみてください。

左右で押す力に差がある場合は、機能の偏りがある可能性があります。
確認できたら、舌回しのエクササイズを行います。
口の中で舌を大きく回すことで、神経と筋肉の働きを整えていきます。
右回り(時計回り)は左側に、左回り(反時計回り)は右側に刺激が入りやすくなります。

先ほどのチェックで動きが弱かった側に合わせて、回す方向を意識してみてください。
このとき、深呼吸も一緒に行いましょう。
深呼吸によって横隔膜が動くと、「迷走神経」という神経が刺激されます。
この迷走神経も脳の12神経の一つで、体をリラックスさせる働きがあります。
舌回しを10回ほど行いながら呼吸を整えたら、最後に大きく息を吐き切ります。
そのタイミングで、お腹の下(丹田)を軽くポンと刺激してみてください。

その後、もう一度舌の動きを確認し、先ほどよりも真っ直ぐになっているか、力の入り方が左右で近づいているかを見てみましょう。
変化が出ている場合は、神経の働きが整い始めているサインです。
顔面神経|表情筋のコントロールを整える
次に、顔の動きをコントロールしている「顔面神経」の働きにもアプローチしていきます。
顔面神経は、表情を作る筋肉をコントロールしている神経です。

本来は一つひとつ丁寧に見ていくのが理想ですが、今回は簡単な方法で行っていきます。
まず、左右それぞれで顔をしかめてみてください。

やりにくい側や、力が入りにくい側を確認します。
やりにくい方の頬に手を当てて、上下・左右・斜めと、さまざまな方向に軽く引っ張りながら深呼吸を行います。

位置を少しずつ変えながら、全体をまんべんなく行いましょう。
終わったら、もう一度顔をしかめてみて、やりやすさが変わっているか確認してみてください。
これらのセルフケアは、単に筋肉をほぐしているだけではなく、脳と神経のつながりを通して、誤作動として学習されてしまったパターンを少しずつ書き換えていくことを目的としています。
一度で大きく変わるものではありませんが、繰り返し行うことで、少しずつ体の反応が変わっていく可能性があります。
無理のない範囲で、日常の中に取り入れてみてください。
まとめ|顎口腔ジストニアは「体の問題」だけではない

顎口腔ジストニアは、顎や口、舌に症状が現れるため、「筋肉の問題」や「噛み合わせの問題」として捉えられることが多いと思います。
しかし実際には、これまで見てきたように、脳や神経の働き、そして無意識の反応や習慣といった部分が影響している可能性があります。
たとえば、
・なぜ同じ動きで症状が出るのか
・なぜ特定の場面になると強く出るのか
・なぜ力を抜こうとしても抜けないのか
こうしたことを考えていくと、単純に筋肉だけの問題では説明しきれない部分もあると思います。
実際に、
・無意識の緊張
・思考のクセ
・繰り返しの動作
といった積み重ねによって、体の使い方が少しずつ変わり、それが誤作動として定着しているケースもあります。
そのため大切なのは、「どこが悪いのか」だけを見るのではなく、
「なぜその状態が続いているのか」
「自分の体がどのように反応しているのか」
といった視点を持つことで、改善のヒントを掴めることがあります。
今回ご紹介したセルフケアも、そうした気づきを得るための一つの方法です。
すぐに大きく変えようとするのではなく、まずは「今の状態を知ること」、そして「少しずつ整えていくこと」が大切になります。
顎口腔ジストニアは簡単に変わるものではないかもしれませんが、体の反応や感覚は、少しずつ変化していく可能性があります。
できる範囲で構いませんので、日常の中に取り入れてみてください。
1人で頑張ってみたけど、どうしても変わらないという方は私たちにご相談ください。その際は真剣にサポート致します。
最後までお読みいただきありがとうございました。

