ジストニアで認知行動療法を取り入れる目的とは?自分でできる実践方法を解説

ジストニアになると、

「また症状が出るかもしれない…」
「失敗したらどうしよう…」
「今日は調子が悪そうだからやめておこう…」

このような考えが頭に浮かぶことはありませんか?

 

実は、このような思考や行動のクセが、知らず知らずのうちに症状の悪循環につながっていることがあります。

 

もちろん、ジストニアは脳の運動プログラムの誤作動によって起こる疾患であり、「考え方だけ」が原因というわけではありません。

 

しかし、症状への不安や恐怖、何度も症状を確認してしまう行動などが積み重なることで、症状が続きやすくなってしまうケースもあります。

 

そこで近年、こうした思考や行動のパターンを見直していく方法として認知行動療法という考え方が取り入れられています。

 

認知行動療法は、「前向きに考えましょう」という精神論ではありません。自分では気付きにくい思考や行動のクセを整理し、少しずつ柔軟な捉え方や行動へと変えていくことで、悪循環から抜け出すことを目指す方法です。

 

この記事では、ジストニアと認知行動療法の関係や、どのような思考・行動のクセが症状に影響しやすいのか、そして今日から実践できる具体的な方法について、できるだけ分かりやすく解説していきます。

 

ジストニアでは思考や行動のクセが症状に影響することがあります

ジストニアでは、脳の運動プログラムに誤作動が生じることで、自分の意思とは関係なく筋肉が過剰に緊張したり、思うように身体を動かせなくなったりする症状が現れます。

 

しかし、実際に多くのジストニアの方と関わっていると、症状そのものだけではなく、「思考」や「行動」が症状の悪循環に関わっていると感じる場面が少なくありません。

 

例えば、

・「また症状が出るんじゃないか」
・「変に見られていないかな」
・「うまく動かなかったらどうしよう」

このような思考が強くなると、自然と症状ばかりに意識が向くようになります。

すると、

「今は大丈夫かな?」
「ちゃんと動くかな?」

と何度も症状を確認するようになったり、「症状が出そうだから今日はやめておこう」と症状が出る可能性のある場面を避けるようになったりすることがあります。

 

もちろん、このような反応は決して特別なものではありません。

 

誰でも思うように身体が動かなくなれば、不安になったり、失敗を避けようとしたりするのは自然なことです。

 

しかし、その不安や確認する行動、避ける行動が積み重なることで、脳は「この動作はうまくいかない」「この場面では症状が出やすい」という運動プログラムを繰り返し学習してしまうことがあります。

 

その結果、症状への意識がさらに強くなり、思考・行動・身体の反応が互いに影響し合いながら、悪循環が続いてしまうことがあります。

 

だからといって、「考え方が悪いからジストニアになった」ということではありません。

 

ジストニアの原因は、あくまでも脳の運動プログラムの誤作動です。

 

ただ、その誤作動が続く過程では、思考や行動のパターンが症状の持続や悪循環に影響することがあり、その部分にも目を向けることが改善への一つのきっかけになる場合があります。

 

このような思考や行動の悪循環に気付き、少しずつ見直していく方法の一つとして取り入れられているのが「認知行動療法」です。

 

次の章では、認知行動療法とはどのような考え方なのか、そしてジストニアにどのように役立てられる可能性があるのかについて、分かりやすく解説していきます。

 

認知行動療法とは?ジストニアで取り入れる目的

ジストニアでは思考や行動のパターンが症状の悪循環に影響することがあるとお伝えしました。

 

その悪循環を見直していく方法の一つが認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioral Therapy)です。

 

認知行動療法とは、自分の「認知(ものの捉え方や考え方)」と「行動」に目を向け、ストレスや不安を生み出しているパターンを少しずつ見直していく心理療法です。

 

「認知」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、簡単に言えば、物事をどのように受け止め、どのように考えるかということです。

 

例えば、同じ出来事が起こっても、

「少し失敗したけれど、次はうまくいくかもしれない。」

と考える人もいれば、

「やっぱり自分はダメなんだ。」

と考える人もいます。

 

出来事は同じでも、その捉え方によって、不安やストレス、そしてその後の行動は大きく変わってきます。

 

認知行動療法では、このような思考や行動のパターンに気付き、より柔軟で現実的な捉え方や行動へと少しずつ変えていくことを目的としています。

 

具体的には、次のようなことを目指します。

・自分の思考や行動のパターンに気付く

・偏った考え方ではなく、柔軟な捉え方を身につける

・不安から生まれる回避行動や確認行動などの悪循環を少しずつ減らしていく

・自分自身でストレスや症状と向き合う力を身につける

 

これは、「無理に前向きになりましょう」という考え方ではありません。

 

ネガティブな考えを否定するのではなく、「本当にそうだろうか」「別の捉え方はできないだろうか」と、一歩引いて自分自身を客観的に見つめる力を育てていくことが大切になります。

 

ジストニアにおいても、

「また症状が出るかもしれない」

「失敗したらどうしよう」

という思考から、不安や緊張が強くなり、症状を何度も確認したり、症状が出そうな場面を避けたりする悪循環がみられることがあります。

 

認知行動療法は、そのような思考や行動のパターンを一つひとつ整理し、少しずつ悪循環を減らしていくための考え方として取り入れられています。

 

あなたにも当てはまる?ジストニアの方によくみられる思考・行動パターン

では、実際にジストニアの方は、どのような思考や行動のパターンがあるのでしょうか?

 

もちろん、すべての方に当てはまるわけではありませんが、施術を通して私が感じるた点を書かせていただきます。

 

① 症状を確認することが習慣になってしまう

「今、症状は出ていないかな?」

「ちゃんと止まっているかな?」

「今日は調子いいかな?」

このように、一日の中で何度も症状を確認してしまうことはありませんか?

 

症状を確認すること自体が悪いわけではないです。

 

脳の誤作動によって勝手に症状が出てしまうので、気にしちゃうことはあると思います。

 

ですが、症状を確認する回数が増えるほど、脳は症状へ集中しやすくなります。

 

実際に「今は症状が出ていないな」と思った瞬間、症状へ意識が向いた途端に、症状が現れてしまったという経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

もちろん、それだけが原因ではありませんが、必要以上に症状へ意識を向け続けることは、脳の誤作動を強める一つのきっかけになることがあります。

 

②「また症状が出るかもしれない」と考えてしまう

一度症状が出た経験があると、「また同じように症状が出るかもしれない」という不安が自然と浮かんできますよね?

例えば、

書痙や音楽家ジストニアでは、

「また手が震えてしまうかもしれない」

「またあのフレーズで指が動かなくなるかもしれない」

と思うことがあります。

 

一方で、

痙性斜頸や眼瞼痙攣、顎口腔ジストニアでは、

「首が揺れてしまうかもしれない」

「まぶたが開かないかもしれない」

「口が勝手に動いてしまうかもしれない」

という不安を感じる方もいるはずです。

 

このような不安を感じることはジストニアだけなく、何かしらのお悩み抱えている方は普通にあると思います。

 

ですが、未来の症状を心配し続けることで、身体が必要以上に緊張したり、「また症状が出る」というイメージばかりが頭の中に残ってしまうことがあります。

 

その結果、実際には症状が出ていない場面でも、「また起こるかもしれない」という不安が強くなり、症状の悪循環につながってしまうことがあります。

 

③ 症状が出そうな場面を避けるようになる

「人前ではなるべく書かないようにしよう」

「演奏する機会は断ろう」

「友人と会ったり、外に出ることはやめよう」

このように、「症状が出たら困る」「周りに迷惑をかけたくない」という気持ちから、自然と行動を制限してしまう方も少なくありません。

 

もちろん、このような行動は自分を守るための自然な反応です。

 

しかし、そのような行動が少しずつ増えていくことで、

「自分にはできない」

「症状があるから無理だ」

という思い込みが強くなってしまうことがあります。

 

また、行動を避け続けることで、「思っていたよりできた」「意外と症状は出なかった」という新しい経験を積む機会が減ってしまう可能性があります。

 

④ 完璧にやろうとしてしまう

真面目で責任感が強い方ほど、

「今日こそ症状を出してはいけない」

「失敗して周りに迷惑をかけてはいけない」

「ちゃんとできなければ意味がない」

という気持ちが強くなることがあります。

 

もちろん、ここもこのような考え方が悪いわけではありません。

 

仕事や家事、演奏やスポーツなど、これまで責任を持って取り組んできたからこそ、このような考え方になっている方もいらっしゃると思います。

 

ですが、その気持ちが強くなり過ぎることで、

「今日も症状が出てしまった」

「もっと頑張らないと」

「もっと意識しないと」

と、自分でも気付かないうちにプレッシャーをかけてしまうことがあります。

 

また、意識では「自分はダメだ」と思っていなくても、

「自分で何とかしなければいけない」

「ちゃんとできなければいけない」

「迷惑をかけてはいけない」

という思いが強くなるほど、無意識のうちに自分自身を追い込んでしまっている方も少なくありません。

 

その結果、身体が必要以上に緊張したり、症状への意識がさらに強くなったりすることで、症状の悪循環につながってしまうことがあります。

 

⑤ 症状が出ることを前提に考えてしまう

「きっと今日も症状が出る」

「この場面ではうまくいかない」

このような考えが続くと、脳はその動作を「難しい動作」として学習しやすくなり、さらに症状を意識するという悪循環につながることがあります。

 

これも繰り返しになりますが、このような思考や行動があるからといって、ジストニアが起こるわけではないです。

 

また、これらはジストニアの方だけにみられるものでもなく、誰でも不安や失敗を経験すれば自然に起こり得る反応です。

 

大切なのは、「こんな考え方をしてはいけない」と否定することではなく、まずは自分にはどのような思考や行動のパターンがあるのかに気付くことが、認知行動療法の第一歩になります。

 

今日からできる認知行動療法の実践方法

ここまでお読みいただき、

「実際には何から始めればいいの?」

と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

認知行動療法では、まず自分の思考や行動のパターンを知ることから始めます。

 

そして、そのパターンを少しずつ見直しながら、新しい行動を取り入れ、その結果を振り返っていきます。

 

ここからは、認知行動療法の基本的な考え方をもとに、ご自身でも取り組める方法をご紹介します。

 

① まずは自分の反応を知ることから始める

認知行動療法では、まず自分自身を知ることから始めます。

 

私たちは症状が出ると、

「今日も症状が出た。」

「やっぱり仕事中は悪くなった。」

というように、症状という結果だけを見てしまいがちです。

 

しかし認知行動療法では、結果だけを見ても、その原因や悪循環のパターンは分からないと考えます。

 

だからこそ、

「その結果が起こるまでに、自分の中で何が起きていたのか」

を振り返ることを大切にします。

 

例えば、仕事で文字を書こうとした場面を思い出してみてください。

 

そのとき、

どのような状況でしたか?
どのような気持ちになりましたか?
身体にはどのような変化がありましたか?
その後、どのような行動を取りましたか?

このように一つひとつ振り返ってみると、

「症状が出た。」

という結果だけでは見えなかった、自分の反応のパターンが少しずつ見えてきます。

 

認知行動療法では、このように自分を客観的に観察し、自分の思考や行動のパターンに気づくことが、改善につながると考えています。

 

✍ ワーク
最近、症状が気になった場面を一つ思い出してみましょう。そのときのことを、次の項目に分けて紙に書き出してみてください。

・状況
・気持ち
・身体の変化
・行動

まずは結果だけではなく、そのとき何が起きていたのかを整理することが、自分の反応のパターンに気づく第一歩になります。

② 最初に頭に浮かんだ考えに気づく

①では、状況や気持ち、身体の反応、行動を書き出しました。

 

次は、その場面で最初に頭に浮かんだ考えに目を向けてみましょう。

 

認知行動療法では、このようにその場で自動的に頭に浮かんだ考えを「自動思考」と呼びます。

 

同じ出来事でも、人によって受け止め方は異なります。

例えば、文字を書こうとしたとき、

ある人は、

「また書けないかもしれない。」

と思うかもしれません。

一方で、

「今日は書けるだろう。」

と思う人もいます。

出来事は同じでも、その瞬間に頭に浮かぶ考え方によって、感じる不安や緊張、身体の反応、その後の行動は変わってきます。

 

しかし、自動思考は無意識に浮かんでくるため、自分では気付いていないことも少なくありません。

だからこそ、「自分はそのとき、何を考えていたんだろう」と振り返ることが大切になります。

 

✍ ワーク
①で書き出した場面を見返し、そのとき最初に頭に浮かんだ言葉や考えを書き出してみてください。

例えば、

・また症状が出るかもしれない
・失敗したらどうしよう
・やっぱり自分には無理だ

など、どんな内容でも構いません。

誰かに見せるものではありませんので、そのとき自分が実際に考えていたことを、できるだけ正直に書き出してみてください。


最初に浮かんだ考えに気づくことが、自分の思考や行動のパターンを見直し、悪循環を変えていく入り口になります。

 

③ 「その考えは本当にそうだろうか?」と事実を整理してみる

認知行動療法では、自動思考は必ずしも事実とは限らないと考えます。

 

自動思考は、その場で瞬間的に浮かぶ考えだからこそ、不安や焦りが強いときには、一つの出来事だけを強く捉えてしまうことがあります。

 

例えば、文字を書こうとして症状が出たとき、

「やっぱり自分はダメだ。書けない。」

と思うことがあるかもしれません。

 

しかし、その出来事だけで、

「本当に自分は書けない」と言い切れるでしょうか。

・仕事中は症状が出たけれど、自宅では書けたことはありませんでしたか?

・最初は書きづらかったけれど、途中から少し書きやすくなったことはありませんでしたか?

・昨日より少し楽だった日や、思っていたより症状が軽かった日はありませんでしたか?

 

認知行動療法で大切なのは、無理に前向きな考え方へ変えることではありません。

 

一つの出来事だけで結論を出すのではなく、他にも事実はなかっただろうか、と振り返ってみることです。

 

そうすることで、これまで気づかなかった事実や、自分自身の思い込みに気づくことがあります。

 

✍ ワーク
②で書き出した自動思考を見返してみましょう。

そして、次の3つについて書き出してみてください。

・この考えを裏付ける事実はありますか?
・この考えと違う事実はありませんでしたか?
・これらの事実を踏まえると、今ならどのように考えられそうですか?


一つの出来事だけで結論を出さず、さまざまな事実を整理してみることが、自分の思考や行動のパターンを見直すきっかけになります。

 

④ 自分の考えが本当にそうなのかを実際に確かめてみる

③では、自動思考が必ずしも事実とは限らないこと、そして一つの出来事だけで結論を出さず、他の事実も整理してみることをお伝えしました。

 

しかし、頭の中だけで考えているだけでは、本当にそうなのかは分からないこともあります。

 

そこで認知行動療法では、実際に行動して、自分の考えが本当にその通りなのかを確かめていきます。

 

これを行動実験といいます。

 

例えば、

「仕事では書けない。」

と思っていたとします。

 

その場合、

「仕事では全く書けない」のではなく、

・一人で書くときはどうだろう?
・同僚の前ではどうだろう?
・上司の前ではどうだろう?
・急いで書くときと、ゆっくり書くときでは違いはあるだろう?

というように、一つひとつ条件を分けて確かめていきます。

 

また、音楽家ジストニアで、

「演奏すると必ず指が動かなくなる。」

と思っているのであれば、

・普段より簡単な曲ではどうだろう?
・テンポをゆっくりにしたらどうだろう?
・一人で演奏するときはどうだろう?
・人前ではどうだろう?

というように、条件を変えながら実際に試していきます。

 

このように行動実験では、「できる・できない」を確認することが目的ではありません。

 

「どのような条件で症状が出やすくなるのか」

「どのような条件では症状が出にくいのか」

を知ることが目的です。

 

そうすることで、

「仕事では全く書けない。」

という考えが、

「上司に見られているときは書きづらい」

「急いで書くと症状が出やすい」

というように、より具体的に整理できるようになります。

 

そして、その気づきが、次にどのような工夫や練習をすればよいのかを考えるヒントにもなります。

 

✍ ワーク
③で書き出した自動思考を一つ選んでみましょう。

そして、「本当にいつもそうなのだろうか?」という視点で、条件を一つずつ書き出してみてください。

例えば、「仕事では書けない」と思っているのであれば、

・一人のときはどうですか?
・人前ではどうですか?
・急いでいるときはどうですか?
・ゆっくり書くときはどうですか?

というように、「どのような条件ならできるのか」「どのような条件で難しくなるのか」を整理してみましょう。


大切なのは、「できる・できない」で終わらせるのではなく、自分の症状にはどのような特徴や傾向があるのかを知ることです。

 

⑤ 行動実験から新しい気づきを見つけ、次につなげる

④では、自分の考えが本当にそうなのかを確かめるために、行動実験を行いました。

 

ここで大切なのは、「できた」「できなかった」だけで終わらせないことです。

 

例えば、

「仕事では書けない。」

と思っていた方が、実際に試してみると、

・一人で書くときは問題なかった。
・急いで書くと症状が出やすかった。
・上司が見ていると緊張して書きにくかった。

ということが分かったとします。

 

この場合、

最初に考えていた

「仕事では書けない。」

という考えは、

「急いで書くと症状が出やすい」

「上司が見ていると緊張して書きにくい」

というように、より具体的な課題へ変わります。

 

すると、次にどのような工夫を試せばよいのかも見えてきます。

 

例えば、

「急いで書くと症状が出やすい」

と分かったのであれば、

「焦らず堂々と書くことを意識してみよう。」

「一文字ずつ丁寧に書いてみよう。」

という方法を試すこともできます。

 

また、

「上司が見ていると緊張して書きにくい」

と分かったのであれば、

「深呼吸を意識しながら書いてみよう。」

「少しゆっくり書くことを意識してみよう。」

という対策を考えることができます。

 

このように、実験から得られた気づきを、次の工夫や行動につなげていくことが認知行動療法では大切になります。

 

思うような結果にならなかったとしても、「失敗だった」と考える必要はありません。

 

認知行動療法では、その結果も大切な情報です。

「なぜそのような反応になったのだろう。」

「次は何を変えて試してみよう。」

と考えることで、さらに自分自身を理解することにつながっていきます。

 

✍ ワーク
④で行った行動実験を振り返ってみましょう。

そして、次のことを書き出してみてください。

・実際に分かったことは何でしたか?
・どのような場面で症状が出やすかったですか?
・反対に、どのような場面では思っていたよりできましたか?
・次はどのような工夫を試してみたいですか?


大切なのは、「できた・できなかった」で終わらせるのではなく、自分なりの対策を考え、次の行動につなげていくことです。

 

⑥ 「どうして反応するのだろう?」と、もう一歩深く考えてみる

ここまで実践してみると、

「どのような場面で症状が出やすいのか。」

「どのような工夫が自分には合っているのか。」

が少しずつ見えてきたのではないでしょうか。

 

しかし、同じような場面で何度も症状を繰り返してしまう場合は、「どうして自分はその場面で反応するのだろう?」と、もう一歩深く考えてみることも大切です。

 

例えば、

「上司が見ていると緊張して書きにくい」

ということが分かったとします。

 

そこで終わるのではなく、

「どうして上司が見ていると緊張するのだろう?」

と自分に問いかけてみます。

 

すると、

「失敗したら評価が下がると思っている」

「ちゃんと書かなければいけないと思っている」

「迷惑をかけてはいけないと思っている」

など、自分でも気づいていなかった考え方が、そこにスポットライトを当てることで見えてくることがあります。

 

こうした考え方に気づくことで、

自分は何に反応しやすいのか。

どのような考え方が症状と関係しているのか。

を少しずつ整理できるようになります。

 

そこが見えてきたら、

「この考え方は今の自分にとって本当に役立っているだろうか。」

「別の考え方をしたら、どのような行動ができそうだろうか。」

と考えてみます。

 

例えば、「ちゃんと書かなければいけない」という考え方が強いのであれば、「完璧というのは自分の基準であって、相手も同じように考えているとは限らない。多少字が曲がっていても気にしすぎなくていいかもしれない。」と考え方を少し変え、そのうえで実際に試してみます。

このように、その考え方をもとにもう一度行動実験を行い、実際にはどうだったのかを確かめていきます。

 

もし思うような結果にならなかったとしても、落ち込む必要はありません。

 

「どうしてまだ反応が起きたのだろう?」

「捉え方や行動を変えるしたら、どう変えればいいだろう?」

このように考えながら繰り返していくことで、自分の考え方や行動の根底となっている価値観や信念が少しずつ見えてきます。

 

そして、その考え方や行動を見直しながら実践を繰り返すことで、これまで反応していた場面でも、少しずつ冷静に対応できるようになっていきます。

 

「気づく」→「考える」→「試してみる」→「振り返る」

この流れを何度も繰り返しながら、自分自身を理解し、少しずつ反応のパターンを変えていく方法なのです。

 

✍ ワーク
⑤で見つけた「症状が出やすい場面」を一つ選んでみましょう。

そして、自分自身に次の質問をしてみてください。

  • どうしてこの場面で反応するのだろう?
  • そのとき、自分は何を心配しているのだろう?
  • その考え方は、今の自分にとって本当に役立っているだろうか?
  • もし別の考え方ができるとしたら、どのように考えられそうだろう?
  • その考え方をもとに、次はどのような行動を試してみようか?


このように「気づく」「考える」「試す」を繰り返していくことが、自分自身への理解を深め、症状との向き合い方を少しずつ変えていくきっかけになります。

 

認知行動療法とジストニアでよくある質問

ここでは、認知行動療法について、ジストニアの方からよくいただく質問をまとめました。

これから始めようと思っている方や、取り組むなかで疑問を感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

Q 本当に考え方を変えるだけでジストニアは改善しますか?

A.

考え方を見直すことで症状が変わる方もいますし、それだけでは十分な変化を感じられない方もいらっしゃいます。

 

認知行動療法では、考え方を見直したうえで、新しい行動を試し、その結果を振り返りながら、自分の反応のパターンを少しずつ変えていくことを大切にしています。

 

そして、ジストニアは脳の誤作動によって起こる体の異常運動です。そのため、考え方や行動を見直すことに加えて、体がどのような場面で異常に緊張しているのかに気づき、その緊張を和らげるためのセルフケアや身体へのアプローチを取り入れることも大切だと考えています。

 

認知行動療法と身体へのアプローチを組み合わせながら取り組むことで、より改善につながりやすくなる方もいらっしゃいます。

 

Q 認知行動療法は自分一人でもできますか?

A.

はい。認知行動療法は、ご自身でも取り組むことができます。

 

実際に今回ご紹介したような、

・状況を書き出す
・自動思考に気づく
・別の見方を考える
・行動して振り返る

といった方法は、ご自宅でも実践できます。

 

はじめは自分の思考のクセや価値観に気づきにくく、難しいと感じることもあると思います。

 

ですが自分自身と向き合い続けていれば、自分のクセに気づきやすくなってくるはずです。

 

それでも何度考えても同じところで悩んでしまう場合や、自分だけでは整理が難しいと感じる場合には、認知行動療法に詳しい専門家へ相談しながら進めることで、新しい視点が得られることもあります。

 

Q ネガティブな性格でも変わることはできますか?

A.

はい、変わる可能性はあります。

 

私たちが「性格」だと思っているものも、これまでの経験や環境の中で身についた考え方や行動の積み重ねによって形づくられている部分があります。

 

そのため、自分がどのような場面でネガティブに考えやすいのか、どのような思考のパターンになりやすいのかを知り、それを少しずつ見直していくことで、以前よりネガティブな考えに振り回されにくくなることがあります。

 

認知行動療法でも大切なのは、

「ネガティブな考え=事実」

ではないということです。

 

例えば、

「また症状が出るに違いない」

と思ったとしても、

それは実際に起きた事実ではなく、そのとき自分の頭に浮かんだ一つの考えに過ぎません。

 

その考えに気づき、

「本当にそうだろうか?」

「他にも考えられることはないだろうか?」

と振り返りながら、新しい行動を繰り返していくことで、少しずつ反応のパターンが変わり、それに伴って物事の捉え方も変わっていくことがあります。

 

私自身も以前は、ネガティブに考えてしまうことが多く、なかなか行動に移せないタイプでした。

 

ですが、自分の考え方のクセに気づき、「その考えは本当に事実なのか」と振り返ることを繰り返すうちに、以前ほどネガティブな考えに引っ張られることは少なくなりました。

 

もちろん、今でもネガティブな考えが浮かぶことはありますが、それを事実だと思い込むのではなく、「今、自分はこう考えているんだな、だからこう切り替えよう」と一歩引いて見られるようになったことが、大きな変化だったと感じています。

 

Q どれくらい続ければ変化を感じられますか?

A.

変化を感じるまでの期間には個人差があります。

 

考え方を見直したことで症状や反応が軽減する方もいます。

 

一方で、その考え方の背景にある価値観や思い込みが強く影響している場合は、その部分にも少しずつ気づき、見直していくことで変化につながることもあります。

 

そのため、一度取り組んだから終わりではなく、

認知行動療法の「気づく」→「考える」→「試してみる」→「振り返る」という流れを繰り返しながら、自分に合った考え方や行動を見つけていくことが大切です。

 

そして、自分自身が納得できる考え方を身につけ、その反応してしまう状況や環境にも少しずつ適応できるようになっていくことが、認知行動療法の大きな目的の一つです。

 

焦らず、小さな変化を積み重ねながら取り組んでみてください。

Q 認知行動療法を続けても改善しない場合はどうすればいいですか?

A.

認知行動療法を続けても変化を感じられない場合は、認知行動療法だけでは脳の誤作動に十分アプローチできていないことも考えられます。

 

例えば、

・体の異常な緊張や反応が強く残っていることで、思うような変化につながっていない。

・過去の経験や記憶の影響が強く、なかなか認知の切り替えができない。

・症状に対する悪いイメージが強く残っていることで、捉え方を変えることが難しい。

 

このようなことが影響している可能性もあります。

 

そのような場合は、今回ご紹介した認知行動療法だけでなく、体の緊張を和らげるセルフケアや、症状に対するイメージを見直す方法も一緒に取り入れてみることをおすすめします。

 

これらの方法については、下記の動画でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

また、自分一人では整理が難しい場合は、必要に応じて専門家のサポートを受けながら進めることで、新たな気づきや改善のきっかけが得られることもあります。

 

まとめ

ジストニアは脳の誤作動によって起こる体の異常運動ですが、症状が続くことで、不安や思考、行動のパターンが悪循環を生み、症状に影響してしまうことがあります。

 

認知行動療法では、その悪循環に気づき、「気づく」→「考える」→「試してみる」→「振り返る」という流れを繰り返しながら、自分に合った考え方や行動を見つけていくことを大切にしています。

 

また、ジストニアでは認知行動療法だけでなく、体の異常な緊張や反応に気づき、セルフケアや身体へのアプローチも組み合わせることで、より改善につながることがあります。

 

まずは一度、自分が症状を感じた場面を振り返り、「そのとき自分は何を考えていたのだろう?」と書き出すことから始めてみてください。

 

このように自分自身を理解し、考え方や行動を少しずつ見直していくことが、結果として症状の変化につながるきっかけになることがあります。

 

もし一人で取り組むことが難しかったり、途中で行き詰まってしまったりした際は、私たちにご相談ください。

 

あなたのお悩みが少しでも解消されるよう、全力でサポートいたします。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

タイトルとURLをコピーしました