「あがり症を克服する」とはどういう状態か?

「あがり症を克服したい」「人前で普通に話せる自分になりたい」
このページを読まれているあなたは、きっと長いあいだ人前の緊張に悩まされてきたのではないでしょうか。
ここでお伝えしたいのは、あがり症の“克服”は、単に一時的に症状が軽くなることではないということです。
あがり症の克服とは、
- 人前に立つ前に不安はあっても、必要以上に飲み込まれなくなる
- もし緊張しても、「あ、今緊張しているな」と自分で対処できる
- 失敗しても、自分を過度に責めずに、またチャレンジできる
といったように、緊張しても自分で戻ってこられる状態になることです。
つまり、「緊張しない人」になるのではなく、緊張とうまく付き合える自分に変わっていくイメージです。
そのためには、単なる「話し方テクニック」や「場数」だけでなく、脳・自律神経・無意識の反応パターンにアプローチしていく必要があります。
別の記事では、あがり症の全体像・原因・セルフケアについても解説していますので、あわせて参考にしてみてください。
あがり症を克服できる人・なかなか克服できない人の違い
同じようにあがり症で悩んでいても、少しずつ人前が楽になっていく方もいれば、「何年経っても変わらない…」と感じる方もいらっしゃいます。
その違いは何でしょうか?
ここでは、実際の臨床経験から見えてきた「克服しやすい方の共通点」をお伝えします。
あがり症を克服しやすい人の特徴
- 自分の状態(症状・感情・考え方)を冷静に観察しようとする
- 「完璧にしよう」とするより、「まず小さくできることから」と考えられる
- うまくいかなかった日があっても、「こういう日もある」と受け止めて続けられる
言い換えると、自分の状態を客観的に認識し、少しずつ試しながら進める人は、脳が新しいパターンを学習しやすく、結果としてあがり症が軽くなりやすい傾向があります。
あがり症をこじらせやすい「落とし穴」
- 「今日こそは絶対に失敗してはいけない」と強く思い詰めてしまう
- 一度うまくいかないと、「やっぱり自分はダメだ」と全てを否定してしまう
- ネットや本の情報をたくさん集めるが、実際の場面で試す前にあきらめてしまう
このような状態では、脳が「人前=危険」「失敗=許されない」と学習し続けてしまうため、あがり症が長引きやすくなります。
ここからは、あがり症を根本から克服していくための具体的なステップをお伝えします。
あがり症を根本から克服する3つのステップ
あがり症を長期的に克服していくためには、次の3つのステップを意識することが大切です。
- 自分の状態と「脳・自律神経の仕組み」を正しく理解する
- 無意識の「反応パターン(感情・価値観・信念)」を整理する
- 人前の場面で「小さな成功体験」を積み重ねる
ステップ1:自分の状態と「脳・自律神経の仕組み」を理解する
あがり症を克服していく第一歩は、「なぜ自分は人前であがってしまうのか?」を理解することです。
・どんな場面で緊張しやすいのか
・どんな症状が出るのか(声・呼吸・震え・頭の真っ白感など)
・どんな考えやイメージが頭に浮かびやすいのか
これらを書き出してみるだけでも、「自分のあがり症のパターン」が少しずつ見えてきます。
そのうえで、
「脳が誤作動しているだけ」
「自律神経が一時的に興奮しすぎているだけ」
と理解できると、「自分の性格がダメなのではない」という視点が持てるようになります。
あがり症の原因や脳・自律神経の仕組みについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
ステップ2:無意識の「反応パターン」を整理する
あがり症を長期的に克服するための“心の中心部分”が、無意識の「反応パターン(クセ)」を知り、書き換えていくことです。
同じ人前の場面でも、
- 「少し緊張するけれど、なんとか話せる人」
- 「緊張で頭が真っ白になり、声が震えてしまう人」
に分かれるのは、
その人の中にある“感情・価値観・信念(心のルール)”が違うからです。
例えば、次のような心のルールは、あがり症を強めやすくなります。
- 「完璧でなければならない」
- 「ミスしてはいけない」
- 「人に迷惑をかけてはならない」
- 「弱い自分を見せてはいけない」
- 「失敗した自分には価値がない」
これらは、頭で考えているというよりも、無意識に自分を縛っている“見えないルール”になっていることが多く、人前に近づくほど、脳が「危険だ!」と反応しやすくなります。
この反応パターンを変えていくには、「自分の中にどんなルールがあるのか?」を客観的に理解していくことが欠かせません。
ステップ3:人前の場面で「小さな成功体験」を積み重ねる
脳は、「体験を通じて」新しいパターンを学習します。
頭でどれだけ理解しても、実際の場面で少しずつ経験していかなければ、脳のクセは変わりにくいままです。
そこで大切なのが、「いきなり本番で完璧を目指す」のではなく、「段階を分けて小さな成功体験を積む」ことです。
例えば、
- 1対1の雑談の中で、いつもより少しだけ自分の意見を言ってみる
- 家族や親しい人の前で、軽く発表の練習をしてみる
- 少人数のミーティングで、1回だけ自分の意見を伝えてみる
といったように、「今の自分でもギリギリできそう」なレベルから始めることがポイントです。
うまくいった経験が増えるほど、脳は「人前で話しても、大丈夫だったこともあったな」
という新しい記憶を少しずつ積み上げていきます。
この「理解」→「無意識のパターンの整理」→「小さな成功体験」の循環が、あがり症を長期的に克服していく流れです。
無意識の「反応パターン」を書き換えるセルフワーク
ここからは、あがり症の克服に役立つ無意識の反応パターンを書き換えるセルフワークをご紹介します。
ご自身のペースで、できそうなものから試してみてください。
① 人前の場面を思い浮かべて、「感情」を言葉にしてみる
まずは、最近あった「人前で緊張した場面」をひとつ思い浮かべてみましょう。
そのうえで、
- どんな感情が一番強かったか?(例:恐怖・恥ずかしさ・不安・怒り・悔しさ など)
- 体のどの部分に、その感情を一番強く感じたか?(胸・喉・お腹・顔 など)
を書き出してみてください。
あがり症の方は、「感情を感じないようにするクセ」がついていることが多く、自分の感情に気づかないまま、無意識の緊張だけが高まっているケースがよくあります。
まずは、「自分はこういう感情を抱えていたんだな」と気づいてあげることが、反応パターンの書き換えの第一歩です。
② その感情の奥にある「価値観・信念」を探してみる
次に、その感情の奥にある価値観・信念(心のルール)を探していきます。
例えば、
- 「負けてはいけない」「完璧でなければならない」という完璧主義
- 「人に迷惑をかけてはいけない」「嫌われてはいけない」という対人関係のルール
- 「弱い自分を見せてはいけない」「失敗した自分には価値がない」という自己評価のルール
などです。
ここで大切なのは、
- 「こんな考え方はダメだ」と責めるのではなく、
- 「自分はこういうルールで、ずっと頑張ってきたんだな」と理解してあげること
です。
まずは「自分の中にこういうルールがあるんだな」と気づくだけで、脳の過剰な反応は少しずつ緩んでいきます。
③ 「別の見方があるとしたら?」と問いかけてみる
価値観や信念を把握できたら、いきなり変えようとするのではなく、「別の見方もあり得るとしたら、どんな見方だろう?」と自分に問いかけてみてください。
例えば、
- 「完璧でなければならない」
→「8割できれば十分な場面もあるかもしれない」 - 「ミスしてはいけない」
→「ミスを通じて信頼関係が深まることもあるかもしれない」 - 「人に迷惑をかけてはならない」
→「お互い様と思ってもらえる人間関係もあるかもしれない」
というように、“別の可能性”を脳に提示してあげるだけでも、反応パターンは少しずつ変わり始めます。
このような心の整理は、一人で行うと難しいことも多いため、必要に応じて専門家のサポートを利用するのもひとつの方法です。
日常生活でできる「あがり症の再発予防・安定の習慣」
あがり症を長期的に安定させるためには、普段の生活の中で「緊張しやすい脳と体のクセ」を整えていくことも欠かせません。
① 睡眠・休息の質を整える
睡眠不足や慢性的な疲労は、それだけで交感神経を高ぶらせ、あがり症の症状を強めやすくします。
- 寝る前1時間はスマホやPCを見続けない
- できる範囲で眠る時間を一定にする
など、できるところから整えていきましょう。
② 呼吸と姿勢を整える
呼吸と姿勢は、そのまま自律神経の状態を反映しており、あがり症とも深く関係しています。
- 胸だけでなく、お腹も優しくふくらむ呼吸を意識する
- 頭の位置が前に出すぎないよう、軽く顎を引く
- 椅子に座るときは、背もたれに頼りきらず、骨盤を立てる意識を持つ
といった小さな工夫が、結果的に「緊張しにくい体の使い方」につながっていきます。
③ 「完璧でなくても行動する」練習を続ける
あがり症を克服した方の多くは、
- 「完璧じゃなくても、まずはやってみよう」
- 「うまくできない日があっても、それも経験のひとつ」
というスタンスに少しずつシフトしていきます。
反対に、
「準備が100%整うまで動けない」
「失敗しない自信が持てるまで挑戦できない」
という状態が続くと、人前に慣れる機会そのものが減ってしまい、脳がいつまでも「人前=危険」という学習を維持しやすくなります。
最初は小さな行動からでかまいません。
「今日はこれだけできた」「前より少しマシだった」という視点を持って、自分の変化を認めていくことが大切です。
一人で抱え込まず、専門家のサポートを借りる選択肢も
ここまで、あがり症を克服するための考え方やセルフワークをご紹介してきましたが、
中には、
- 自分一人では感情や思考の整理が難しい
- 原因はなんとなく分かってきたが、具体的にどう変えればいいか分からない
- 人前の場面になると、頭が真っ白になり、自分ではコントロールできない
と感じる方もいらっしゃると思います。
その場合は、一人で抱え込まずに、脳や自律神経、無意識の反応パターンに詳しい専門家に相談することも大切な選択肢です。
当院では、脳の誤作動や自律神経の乱れ、無意識の反応パターンにアプローチする「脳バランス整体」を通じて、あがり症・イップス・ジストニア・自律神経の不調などにお悩みの方の改善をサポートしています。
「自分のあがり症の原因をもっと具体的に知りたい」
「一人では整理しきれない部分を一緒に見てほしい」
と感じられた場合は、下記のページも参考にしてみてください。
あがり症は、「性格の弱さ」や「根性のなさ」ではありません。
脳と自律神経のクセを理解し、無意識のパターンを整えていくことで、少しずつ新しい自分に変わっていくことができます。
このページの内容が、あなたがあがり症の克服に向けて一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。


