
パニック障害と聞くと、動悸や息苦しさをイメージする方が多いかもしれません。
ですが実際には、「お腹の違和感」や「胃のムカムカ感」をきっかけに、不安や発作につながっていく方もいれば、パニック症状がお腹に現れる方も少なくありません。
・突然お腹が痛くなる。
・急にお腹が張って食べられなくなる。
・理由もなく気持ち悪くなる。
・トイレに行きたくなる。
・冷えるような感覚が広がる。
そして、その感覚に戸惑いながら、
「なぜお腹なのか」
「何か別の病気ではないのか」
と不安になってしまう。
病院で検査をしても大きな異常は見つからず、それでも違和感は繰り返される。
そんな状況に、どう向き合えばいいのか分からず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、
なぜパニック障害でお腹の違和感が起こるのか。
なぜ「突然」「繰り返し」感じるのか。
そして、どう向き合えば少しずつ反応が弱まっていくのか。
神経の働きと体の反応という視点から、できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。
今感じているお腹の違和感が少しでも解消するヒントになれば幸いです。
なぜパニック障害になると、お腹の違和感が突然起こるのか?

パニック障害でお腹の違和感に悩んでいる方の多くが、
「ある日突然、お腹の不調が始まった」
「理由が分からないまま、急に症状が出た」
と感じています。
結論からお伝えすると、パニック障害で起こるお腹の違和感は、不安をはっきり意識する前に、先に体の反応として始まることが多い症状 です。
実際には、
・突然お腹が張ってくる
・胃がムカムカして気持ち悪くなる
・お腹が冷えるような感覚とともに痛みが出る
といった違和感が先に起こり、その感覚に驚いたり焦ったりすることで、あとから不安や動悸が強くなっていく、という流れで症状が広がることがあります。
そのため、
「理由もなく突然起きた」
「お腹だけがおかしくなった」
と感じやすくなりますが、パニック障害ではよく見られる経過のひとつです。
では、なぜ「今このタイミング」で症状が出たように感じるのでしょうか。
パニック障害の症状は、その場で起きた出来事だけが原因になっているわけではありません。
以前から続いていた緊張や、無理をしながら過ごしていた期間、気を張り続けていた生活習慣などが重なり、体の中では余裕が少しずつ減っていくことがあります。(さらに詳しく知りたい方はパニック障害のトリガーとは? なぜ特定の場面で症状が出るのか|治るきっかけと再発を防ぐ考え方の記事も併せてお読みください)
ただこの段階では、強い痛みやはっきりした不調が出るわけではないため、本人は「特に問題なく過ごせている」と感じていることがほとんどです。
そして、
・疲れや睡眠不足
・環境の変化
・体調の揺らぎ
・仕事上での負担やストレス
・会議や上司とのコミュニケーションなど、気を張る場面
こうした状態が続いたときに、それまで表に出ていなかった反応が、お腹の違和感や不快感として一気に現れることがあります。
このため、症状が出た瞬間だけを見ると、「何の前触れもなく突然起きた」ように感じられてしまうのです。
実際には、その時点で初めて問題が起きたのではなく、それまで溜まっていた負荷が体の反応として表に出たというケースが多く見られます。
パニック障害でお腹が気持ち悪くなるメカニズム

パニック障害で起こるお腹の痛み、気持ち悪さ、張り、ムカムカ感は、自律神経の働きと内臓の反応が深く関係しています。
私たちの体は、不安や緊張を感じたとき、無意識のうちに「身を守るモード」に切り替わります。
このときに働くのが自律神経です。
緊張が強くなると、体は生き延びるための反応を優先し、消化や吸収といった内臓の働きは一時的に後回しにされやすくなります。
その影響で、
・胃や腸の動きが不安定になる
・お腹が張る
・ムカムカして気持ち悪くなる
・冷えるような違和感が出る
といった反応が起こりやすくなります。
これは「消化器官に異常が起きた」というよりも、緊張や不安に対応するために、体の働きのバランスが一時的に切り替わっている状態です。
また、お腹は感情やストレスの影響を受けやすい部位でもあります。
腸は「第二の脳」と呼ばれることがありますが、これは単なる例えではないです。
腸には腸管神経系と呼ばれる神経のネットワークがあり、脳とは独立しながらも、常に情報をやり取りしています。
そのため、不安や緊張、ストレスを感じると、考える前に腸の動きや感覚に影響が出やすくなります。これは、急性および慢性ストレスが腸管神経系や迷走神経、腸内環境を介して消化管機能に影響を及ぼすことを示した研究でも報告されています。(参考元:急性および慢性ストレスが消化管の生理機能に及ぼす影響:微生物叢・腸管・脳軸の観点から)
たとえば、大事な会議の前にお腹が痛くなったり、強い緊張を感じた瞬間にお腹の調子が悪くなったりした経験は、多くの方に心当たりがあるのではないでしょうか。
パニック障害の場合も同じように、無意識の緊張やストレスが続くことで、その影響が腸の神経に伝わり、お腹の張りやムカムカ感、違和感として現れやすくなります。
同じように緊張していても、
・動悸として出る人
・息苦しさとして出る人
・お腹の違和感として出る人
と反応の出方には個人差がありますが、お腹に症状が出やすい方は、この神経の反応が内臓に表れやすい状態と言えます。
こうした反応そのものは異常ではありません。
ただ、繰り返し起こることで、お腹の感覚に意識が向きやすくなり、症状が続いているように感じてしまうことがあります。
なぜお腹の違和感が繰り返されるのか(条件反射)

パニック障害でお腹の違和感に悩んでいる方の多くが、「一度出てから、同じような場面で何度も繰り返す」という感覚を持っています。
多くの場合、最初に起きた強い不快な体験が、脳と体に記憶されていることが関係しています。
たとえば、突然お腹が張ったり、ムカムカして強い不安を感じた経験があると、脳はそのときの状況や体の感覚を、「とても怖い体験だったもの」 として覚えます。
一度、強い不安や怖さを伴う体験が起こると、そのときの場所や時間帯、体調、そしてお腹の感覚までもが、セットで記憶されやすくなります。
そして次に、同じような状況や、少し似た場面に近づいただけで、脳が「またあの怖い体験が起きるかもしれない」と判断し、体が先回りして反応を起こすようになります。
こうした流れの中で、同じような場面に出会うと、体が無意識のうちに反応を繰り返すようになります。
この段階では、「不安になったからお腹が気持ち悪くなる」のではなく、お腹の違和感が先に出て、それをきっかけに不安が強くなるという順番が起こりやすくなります。
さらに、
「またあの感じが出るかもしれない」
「次はどこで起きるのだろう」
と考えるようになると、予期不安 が強くなっていきます。
予期不安が続くと、まだ症状が出ていない段階でも、体は自然と身構えた状態になります。
その状態では、お腹の感覚に意識が向きやすくなり、普段なら気にならない張りや動きまで、強い違和感として感じてしまいます。
その結果、わずかな体の変化が不安につながり、不安がさらに体の反応を強める、という流れができやすくなります。
体は、「同じつらい体験を繰り返さないようにしよう」として、無意識のうちに学習し、反応しています。
そのため、お腹の違和感が続いているからといって、体が壊れているわけでも、回復できない状態に入っているわけでもありません。
この条件反射と予期不安の仕組みを理解することが、このあとお伝えする「どう向き合えば、少しずつ反応が弱まっていくのか」を考えるうえで、大切なポイントになります。
お腹の違和感を感じるパニック障害に対するセルフケア

ここまでお伝えしてきたように、パニック障害のお腹の違和感は、神経が「怖い体験」と結びついて無意識に反応している状態です。
こうした反応は、無理に消そうとしたり、怖さを抑え込もうとしたりするほど、かえって過敏になりやすい傾向があります。
そこで大切なのが、体と神経が安心できる関わり方を、日常の中に取り入れていくことです。
そのひとつとして、体性―内臓反射に着目したセルフケアがあります。
これは、体(皮膚や筋肉)へのやさしい刺激が神経を通じて内臓の働きにも伝わり、体に触れることで内臓や自律神経を落ち着かせやすくする仕組みを利用した方法です。
まず取り入れていただきたいのが、お腹まわりをゆるめるセルフマッサージです。
仰向けに寝るか、楽な姿勢で座り、指全体をお腹に当てて、ゆっくりと沈めるように押していきます。
ポイントは、力を入れず、ゆっくり沈めることです。
指を沈める深さによって、神経の反応が変わります。
沈めていったときに、
「違和感がある」
「不快に感じる」
と感じる部分は、神経の働きが異常に反応している場所と考えられます。
反対に、押しても特に何も感じない場合は、その場所では神経の反応が起きていないことが多いため、無理に続ける必要はありません。
ご自身の体が反応を示す部分を、丁寧に探すようにしてください。
押す場所によっては、本当に触れる程度の力でも違和感を覚えることがあります。その場合は、その強さがちょうど良い刺激です。強く押す必要はありません。
違和感や不快感を感じたところまで沈めたら、その状態を2〜3秒ほどキープし、ゆっくりと深呼吸を一度行います。その後いったん圧をゆるめ、再び違和感を感じるところまで、ゆっくり沈めていきます。
この「沈める → キープ → 深呼吸」を、同じ場所の違和感が和らぐまで繰り返してみてください。
このセルフケアの目的は、過敏になっている神経の反応をしっかり引き出して、深呼吸を通して「今は落ち着いて大丈夫」という感覚を脳に伝えて、反応を沈めることが大切です。
あわせて、胃腸の違和感や不安感、パニック障害におすすめの経穴(ツボ)への刺激もおすすめです。
ツボを刺激する時も、押す圧(強さ)がポイントとなり、強く押す必要はなく、気持ちいい、心地よい痛みを感じる程度で十分です。
中脘(ちゅうかん)
みぞおちとおへその中間にあるツボで、胃腸の働きや緊張感を整えるとされています。

天枢(てんすう)
おへその左右、指3本分外側に位置し、お腹の張りや不快感と関係が深いツボです。

足三里(あしさんり)
ひざ下のスネ外側にあり、消化機能や自律神経のバランスを整える代表的なツボです。

内関(ないかん)
手首の内側中央から指3本分ひじ側にあり、不安感や緊張を和らげるとされています。

神門(しんもん)
手首の小指側のくぼみにあり、心を落ち着かせたいときによく使われるツボです。

関元(かんげん)
おへそから指4本分下にあり、体の中心を安定させる位置として知られています。

太衝(たいしょう)
足の甲で親指と人差し指の間を足首方向へ進んだところにあり、ストレスや緊張と関係するツボです。

セルフケアは、違和感が出たときだけ慌てて行うよりも、日常の安心時間として取り入れることがポイントです。
朝や夜の落ち着いた時間に、深呼吸と合わせて行ってみてください。
体は、「過剰に反応しなくても大丈夫だ」という感覚を繰り返し受け取ることで、少しずつ脳は安心を取り戻していきます。
セルフケアは焦らず継続していくことが安定への1番の近道ですので、諦めず頑張っていきましょう!
食欲はあるのに、いざ食べようとすると気持ち悪くなる理由

・お腹は空いているのに、料理が目の前に来た瞬間から胃がムカムカしてきて食べられなくなる。
・匂いを嗅いだだけで「うっ」となり、口に入れる前から気持ち悪くなる。
このパターンが続くと、「食欲はあるのに、なぜ食べられないのか」が一番つらくなってきます。
ここで起きているのは、気持ちの問題というより、神経の切り替えが噛み合っていない状態です。
食べる前の体は、本来「消化の準備モード」に切り替わります。
このとき中心になるのが副交感神経(特に迷走神経)です。
迷走神経が働くと、胃は食べ物を受け入れるようにゆるみ、胃腸の動きや分泌も“食事向け”に整っていきます。
ところが緊張が強いと、交感神経のスイッチが入りやすいままになります。
交感神経が高い状態は、体が「守り」に入っている状態です。
この状態では、消化よりも警戒が優先されやすく、胃が受け入れるための動きが出にくくなります。
すると、食べ物を見たり匂いを嗅いだりして本来は消化に向かう場面なのに、胃腸側は“受け入れの準備が整いきらない”ままになり、ムカムカや張りとして体感されやすくなります。
さらに厄介なのが、匂い・視覚・「食べるぞ」という予測そのものが、神経を動かすスイッチになることです。
体が「食事の場=しんどくなるかもしれない」と学習していると、料理が来た瞬間に交感神経が上がり、同時に胃腸の感覚が鋭くなります。
その結果、「空腹だったのに食べられない」という逆転現象が起こります。
空腹や満腹がきっかけになりやすいのも、同じような神経のエラーが起きているためです。
空腹では、胃の収縮やホルモンの変化などで内臓の感覚入力が増えます。
満腹では、胃が広がり、内臓から脳へ送られる情報量が増えます。
この“内臓の情報量が増えるタイミング”に、交感神経が過剰になっていた、体が身構えていたりすると、不快感として強調されやすくなります。
本来は自然な変化なのに、「嫌な感じ」「危険な感じ」として拾われてしまいます。
ここまで読んで、「毎回、空腹や満腹で起こるなら、別の病気では?」と考える方も多いと思います。
実際、空腹時や食後の気持ち悪さには、胃炎、胆のうの問題など、体側の要因が関係することもありますので、心配な場合は、一度内科や消化器内科で、内臓そのものに問題がないか確認しておくと安心できると思います。
そのうえで、検査で大きな異常が見つからないのに毎回同じタイミングで起こる場合は、神経の働きが中心になっているケースが多くなります。
この場合は、脳が「食事の場=神経が乱れる」というパターンを条件として学習している可能性があります。
そのときは、前の章でお伝えしたセルフケアのように、体と神経を落ち着かせることを日常に取り入れてみてください。
また食事の直前に水を少量飲むことも対処的ではありますが、神経の働きを和らげることが期待できますのでご紹介します。
水の摂取は、胃をやさしく拡張させることで、胃の受け入れ(適応性弛緩)や迷走神経反射の評価に使われることがあり、内臓の感覚と神経の反応に関係することが示唆されています。
この働きによって期待できるのは、胃腸を無理に動かすことではなく、「これから消化に入っても大丈夫」という信号を、神経に伝えることです。
少量の水が胃に入ると、胃の壁がゆっくりと伸ばされ、その刺激が迷走神経を通じて脳に伝わります。
この反応は、胃が食べ物を受け入れる準備を整えるための、自然な神経反射のひとつです。
その結果、
・胃が過剰にこわばった状態がゆるみやすくなる
・内臓からの感覚が「不快」ではなく「通常の変化」として処理されやすくなる
・食事前に高まりやすい交感神経の緊張が、わずかに下がりやすくなる
といった変化が起こることがあります。
あくまで薬のような即効性があるわけではありませんが、食事の直前に少量の水を口にすることで、神経の切り替えがスムーズになり、「食べ始めのムカムカ感」や「受け入れにくさ」が和らぐ方もいますので、試してみください。
食欲がある方が気をつけたい点は、食事の前後で体の感覚を監視しすぎないことです。
「気持ち悪くならないか」を確認するほど、神経はその感覚を重要だと判断して拾いやすくなりますので食事を“判定の場”にしないようにすることが、胃腸の違和感を長引かせないためのコツになります。
当院にお越しいただいたパニック障害の方の体験談
パニック障害・睡眠障害・嗅覚異常にお悩みの患者様
※結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。
パニック障害、めまい、光が眩しい、音がうるさい、歩行時のふらつき、電車に乗れない、不安症にお悩みの方の体験談
※結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。
会議室、講習会など人の集まる密閉された空間での緊張と気持ち悪さにお悩みだった方の体験談
※結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。
動悸、胸の苦しさ、全身のざわつき、気分の落ち込み、大腸の調子の悪さにお悩みの方の体験談
※結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。
他にもパニック障害にお悩みの方の体験談の動画がありますので、気になる方はチェックしてみてください。
まとめ|お腹の違和感は「体の反応」を知ることで変えていけます

パニック障害で起こるお腹の違和感は、胃や腸そのものに問題が起きているというより、神経の働きが一時的に過敏になっていることで現れる反応です。
多くの方が「突然起きた」「理由が分からない」と感じますが、実際には、これまで積み重なってきた緊張や負荷が、体の反応として表に出ただけというケースが少なくありません。
不安を強く意識する前に、先にお腹の張りやムカムカ感が出ることがあります。
その感覚に驚いたり意味づけをしてしまうことで、あとから不安や動悸が強くなります。
この流れは、パニック障害ではよく見られる経過です。
また、食欲はあるのに食べられなくなることや、空腹や満腹で気持ち悪くなる感覚も、交感神経と副交感神経の切り替えがうまく噛み合わないことで起こりやすくなります。
体が警戒した状態のままでは、消化に必要な副交感神経の働きが十分に出にくくなります。
その結果として、胃腸の違和感が強く意識されやすくなります。
この状態が続くと、「また起きるかもしれない」「次はどこで出るのだろう」と意識が向きやすくなります。
それが条件反射や予期不安として定着していくこともあります。
ですが脳は「危険かもしれない」と学習した反応を、「大丈夫だった」という経験によって、少しずつ書き換えていくことができます。
体性―内臓反射を利用したセルフケアや、食事の前後に体の感覚を監視しすぎない意識、神経の切り替えを助けるちょっとした工夫の積み重ねによって、お腹の違和感が出ても、以前ほど振り回されなくなっていく方が多いです。
焦らず、少しずつ安心できる経験を重ねていくことが結果として、お腹の違和感を弱めていく近道になります。
もし1人で頑張ってもうまくいかないときは、私たちが真剣にサポートしますので、その際はご相談ください。
あなたのお悩みが解決され、外食や外へ行く機会が増えることを願っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。

