あがり症の原因とは?脳の反応パターンから専門家が徹底解説

人前で話そうとすると、声が震える・頭が真っ白になる・心臓がバクバクする…。
「どうして自分だけこんなに緊張してしまうのだろう」「性格の問題なのかな」と、長年一人で抱え込んでいる方は少なくありません。
結論からお伝えすると、
あがり症の原因は「性格」ではなく、脳の反応パターンと自律神経の乱れ、そして無意識の思い込みやルールにあります。
この記事では、あがり症にお悩みの方のサポートを続けてきた臨床経験をもとに、あがり症の原因を「脳 × 自律神経 × 無意識」の3つの視点から分かりやすく解説していきます。
まずは、あがり症の原因を正しく理解するところから、一緒に始めていきましょう。
あがり症の改善方法について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
▶ あがり症を改善する方法(脳と自律神経の専門家が詳しく解説)
より詳しい専門ページはこちら:
あがり症専門ページ(石井堂クリニカルオフィス)
あがり症はなぜ起こるのか?まずは本当の原因を知ることが大切
あがり症は「性格の弱さ」ではありません
多くの方が「自分はメンタルが弱いから」「小心者だから」と、自分の性格を責めてしまいます。
しかし、臨床の現場で多くの方を拝見していると、
- 普段は仕事も家庭もきちんとこなしている
- 責任感が強く、周りからも信頼されている
- むしろ「しっかりしている」と言われることが多い
といった方ほど、あがり症で悩まれているケースがとても多いのです。
あがり症は、「性格がダメだから」ではなく、「脳が特定の場面で誤作動を起こしてしまう状態」と考えた方が、実際の状態に近くなります。
緊張そのものは「正常な反応」
そもそも、緊張すること自体は悪いことではありません。
人前で話す・初対面の人と会う・大事な会議に出るといった場面で、ある程度の緊張が生じるのは、ごく自然な反応です。
問題は、「必要以上に過剰な反応が出てしまい、日常生活や仕事に支障が出ているかどうか」です。
あがり症とは、
- 声が震えて話せない
- 頭が真っ白になって言葉が出てこない
- 動悸や息苦しさで、その場から逃げたくなる
といった状態が、
「自分の努力や気合いではコントロールできないレベルで繰り返し起こる状態」を指します。
この「過剰な反応」を引き起こしているのが、脳の反応パターンと自律神経の乱れです。
あがり症の原因①|脳の“誤作動”による反応パターンの固定化
扁桃体の過敏さが「危険信号」を出し続けてしまう
脳の中には、扁桃体(へんとうたい)と呼ばれる、危険を察知するセンサーのような部分があります。
この扁桃体は、本来は「命に関わる危険」から身を守るために働く大切な機能です。
しかし過去の経験やストレスの影響で、この扁桃体が過敏になり、
- 人前に立つ
- 自己紹介をする
- 会議で発言する
といった場面を「命の危険に近いほどのストレス」として勘違いしてしまうことがあります。
その結果、脳が「危険だ!」と判断し、身体全体に緊急事態の指令を出してしまうのです。
前頭前野(考える脳)が一時的に働かなくなる「頭が真っ白」状態
あがり症の方がよく口にされるのが、「いきなり頭が真っ白になって、何を話していいか分からなくなる」という状態です。
これは、扁桃体が過剰に働いた結果、
論理的な思考や言語を司る「前頭前野(ぜんとうぜんや)」の機能が一時的に低下している状態と考えられます。
脳が「今は考えるよりも、まずは危険から逃げることを優先しよう」と判断すると、
考える機能よりも「戦う・逃げる」のモードが強くなってしまい、
その結果として「頭が真っ白になる」という現象が起こります。
小脳・脳幹の機能低下が「声」にも影響する
脳の中には、小脳(しょうのう)という、バランスや筋肉の協調運動を司る部分があります。
また、呼吸や心拍の調整に関わる脳幹(のうかん)も重要な役割を果たしています。
小脳や脳幹の働きがストレスなどで低下すると、
- 声が震える
- 舌がうまく回らない
- 呼吸が浅くなる
- 喉が締め付けられるように感じる
といった症状として現れます。
つまり、あがり症は「気持ちの問題」だけで起きているのではなく、脳の機能バランスが崩れることで、声・呼吸・筋肉の協調といった部分にも影響が出ていると考えられるのです。
あがり症の原因②|自律神経の乱れによる身体症状
交感神経が過剰に働くとあがり症の症状が出やすくなる
自律神経には、アクセル役の「交感神経」と、ブレーキ役の「副交感神経」があります。
人前に立つとき、ある程度交感神経が働くのは自然なことですが、あがり症の方はこの交感神経が必要以上に強く働きすぎてしまう傾向があります。
交感神経が過剰に優位になると、
- 心臓がドキドキする(動悸)
- 手や声が震える
- 顔が熱くなる・赤面する
- 汗が止まらない
といった症状として現れ
「また失敗してしまった…」という記憶が積み重なることで、さらに人前の場面が怖くなってしまう悪循環が続いてしまいます。
呼吸の乱れが症状をさらに強めてしまう
緊張すると、無意識のうちに呼吸が浅く早くなり、過呼吸に近い状態になることがあります。
すると、脳に十分な酸素が行きわたらず、
- 頭がボーッとする
- 視界が狭くなる
- 息が吸えない感じがする
- 余計に不安が増す
といった状態につながります。
このとき、「こんな状態では話せない」「また失敗してしまう」という思考が強くなることで、脳と自律神経の興奮がさらに高まり、あがり症の症状が増幅してしまうのです。
あがり症の原因③|“無意識の思い込み・ルール” による脳の反応
自分では気づけない「無意識の反応」が症状を作っている
あがり症の方とお話をしていると、ほとんどの方が次のようにおっしゃいます。
「上司の前に立つと緊張するんです」
「大勢の前ではダメなんです」
「オンラインの会議が本当に苦手で…」
しかし、実際に検査や対話を進めていくと、ご本人が思っている要因とは全く違う部分に脳が反応していたというケースが多くあります。
たとえば、
- 上司だと思っていたが、実は「部下の視線」に強く反応していた
- 大勢の前が苦手なのではなく、「特定の同僚一人」を怖がっていた
- 会議そのものではなく、「失敗すると評価が下がる」というルールに脳が反応していた
といった具合です。
脳が「危険」だと判断しやすい無意識のルールの例
無意識の中には、次のような「〜しなければならない」「〜であるべき」というルールが潜んでいることがあります。
- 完璧に話さなければならない
- 失敗してはいけない
- 人に迷惑をかけてはいけない
- バカにされてはいけない
- 弱いところを見せてはいけない
こうしたルールと現実とのギャップが大きいほど、脳は「危険だ」と判断しやすくなり、その結果として、人前であがりやすい状態が続いてしまいます。
無意識の反応パターンを「客観視」できることが改善の最大のカギ
ここが、あがり症改善の中でも最も重要なポイントです。
まずは「自分の中にこういうルールや捉え方があったんだな」と気づくだけでも、脳が自動的に起こしていた過剰反応は少しずつ緩んでいきます。
そして、「この捉え方があったから、脳があの場面で過剰に反応していたんだな」と客観的に理解できた瞬間、脳はその情報を【命の危険ではない】ものとして再評価し始めます。
当グループであがり症の方を多く診させていただく中で共通しているのは、
- 本人は「上司に緊張している」と思っていたが、無意識では「部下に失敗を見せたくない」に反応していた
- 「会議が苦手」だと思っていたが、「完璧でいなければならない」という信念に脳が反応していた
- 「大勢の前が怖い」と思っていたが、実は過去の一度の失敗体験の記憶に縛られていた
というように、
本当の原因は、自分では気づけなかった「無意識の反応パターン」にあったということです。
この“無意識の反応パターン”を一緒に整理し、客観視できるようになることが、あがり症の改善において非常に重要なステップだと、これまでの臨床から強く感じています。
あがり症の原因④|過去の経験・トラウマの記憶
過去の出来事が「今の自分」を縛ってしまうことがある
あがり症でお悩みの方の中には、次のような過去の経験をお持ちの方が少なくありません。
- 学生時代の発表で大きくつまづいて笑われた
- 新卒の時、プレゼンで失敗して強く叱責された
- 自己紹介で言葉が出ず、その場の空気が凍ってしまった
- 面接で頭が真っ白になり、何も答えられなかった
こうした出来事は、時間が経っても「映像記憶」や「感情の記憶」として脳に残り続けることがあります。
そして、似たような状況に直面した瞬間、脳が過去の記憶を呼び起こし、身体に同じような反応を起こしてしまうのです。
「特定の言葉だけ言えない」など、ピンポイントで反応が出ることも
中には、
- 自分の名前だけ言えない
- 特定の音(タ行など)になると急に声が詰まる
- 「よろしくお願いします」がどうしても言えない
といった、特定の言葉にだけ症状が出るケースもあります。
これは、過去の失敗体験や恥ずかしい記憶が、その言葉や場面に強く結びついていることで、
脳が「また同じことが起きるかもしれない」と感じてしまい、反射的にブレーキをかけている状態です。
あがり症の原因⑤|場面・状況(シチュエーション)による条件反射
朝礼・会議・自己紹介など、脳が反応しやすい「条件」がある
あがり症の方をサポートしていると、
- 朝礼の自己紹介だけがダメ
- 少人数の会議の方が逆に緊張する
- オンラインの打ち合わせになると急に苦しくなる
といった“場面限定の反応”がよく見られます。
これは、その場の空気・視線・レイアウト・順番待ちの感覚など、さまざまな要素が組み合わさることで、
脳が条件反射的に「危険だ」と判断してしまっている状態です。
あなたの中の「症状スイッチ」が入る瞬間を知ることが大切
あがり症を改善するうえで大切なのは、「どのタイミングで症状スイッチが入っているのか?」を知ることです。
たとえば、
- 順番が近づいてきたとき
- 名前を呼ばれた瞬間
- 人の視線が一斉に向いたとき
- 「では、◯◯さんお願いします」と言われた瞬間
など、人によってスイッチが入るポイントは異なります。
「自分の場合は、ここで一気に緊張が跳ね上がるんだな」と分かるだけでも、対策の立て方や、脳へのアプローチの仕方は大きく変わってきます。
症例紹介|実際に当院で見られた“あがり症の本当の原因”
ここからは、実際にあがり症でお悩みだった方のケースを一部ご紹介します。
※個人が特定されないよう、一部内容を変更しています。
ケース1:人前で頭が真っ白になる40代男性・管理職
数十名の社員を前に話すと、
頭が真っ白になり、汗が止まらなくなるというお悩みで来院されました。
ご本人は「大勢の前で話す経験が少ないから」とおっしゃっていましたが、
検査や対話を進めていくと、
- 実は、少人数の打ち合わせではほとんど緊張しない
- 「部下に尊敬されていたい」という思いがとても強い
- 「失敗した経営者と思われたくない」という不安がある
といった背景が見えてきました。
つまり、脳は「大勢の前で話すこと」そのものではなく、「部下の前で失敗すること」に過剰に反応していたのです。
この点を一緒に整理しながら、身体の緊張(自律神経)を整える施術と、無意識のルールの調整を続けた結果、「多少緊張はするけれど、話の内容が飛ぶことはなくなった」とおっしゃっていただけるようになりました。
ケース2:オンライン会議で声が震える30代女性・会社員
少人数のオンラインミーティングになると、自分の番で声が震え、早く終わらせたい気持ちでいっぱいになるという方のケースです。
詳しくお話を伺うと、
- 学生時代、音読でつまづいて笑われた経験
- 新人の頃、会議中に上司からきつく注意された経験
- 「迷惑をかけてはいけない」「ちゃんとしなければならない」という強いルール
が重なっていることが分かりました。
ご本人は「オンラインが苦手なんです」とおっしゃっていましたが、
実際には、「失敗して周りの時間を奪ってはいけない」という思いが強く、脳がそれに反応していたのです。
施術を通して自律神経のバランスを整えつつ、上記の内容があがり症と関連していたと認識することで「会議の前の不安がだいぶ減ってきた」と変化を実感されました。
※上記はあくまで一例であり、変化の程度には個人差があります。
すべての方に同じ結果を保証するものではありません。
「脳バランス整体」を受けられた方の喜びの声
約20年間、試験の緊張で手が震えて文字が書けなかった方の体験談
約20年間、あがり症、痙性書痙(手のジストニア)による緊張に悩まれていた患者様。
特に会社で行われるクレペリン検査(筆記検査)では、強い緊張がかかると手が震えてしまい、左手で右手を支えないと文字が書けないほど状態がつらく、脳神経外科や心療内科で薬を処方されながら過ごされていたそうです。
しかし症状が思うように変わらず、ご相談いただきました。
施術後の試験では、緊張は残るものの、「手の震えが改善され、最後まで片手で書ききる事ができた」と仰っていただきました。
また後日、「無事に試験に合格できました」と大変嬉しいご報告をいただきました。
※結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。
動画一覧はこちら
あがり症を改善するために必要な3つのステップ
ステップ1:脳と自律神経の「誤作動」を整える(機能面)
あがり症の改善では、まず脳と自律神経の土台を整えることが大切です。
当グループでは、機能神経学的な検査やアクティベータメソッドなどを用いて、
- 小脳や脳幹の機能バランス
- 姿勢・筋肉の緊張状態
- 呼吸のパターン
などを確認しながら、「緊張してもパニックになりにくい身体の状態」を目指して施術を行っていきます。
ステップ2:無意識の反応パターンを特定・客観視する(心理面)
次に重要なのが、「自分の脳が何に反応していたのか」を一緒に整理していくことです。
先ほどお伝えしたように、
- 完璧主義のルール
- 失敗してはいけないという思い込み
- 特定の人の視線に対する恐怖
など、無意識の反応パターンを客観視できるようになると、脳はそれを「命の危険ではない情報」として再学習し直すことができるようになります。
ステップ3:同じ場面でも脳が反応しにくくなるよう適応させる
最後は、実際の場面に近い状況でも、脳が過剰に反応しないように適応させていくことです。
人によって、
- 少人数から練習する方が合う方
- あえて本番の機会を増やした方が良い方
- イメージトレーニングが効果的な方
など、ステップの進め方は違いますが、「脳が危険だと感じていた場面」に少しずつ慣れていくことで、反応パターンを書き換えていくことが可能です。
まとめ|あがり症の原因は“脳 × 自律神経 × 無意識の反応”の3つ
ここまで、あがり症の原因についてお話してきました。
最後に、重要なポイントを整理します。
- あがり症は「性格」ではなく「脳の反応パターン」の問題
- 扁桃体や前頭前野、小脳などのバランスが崩れることで、声・呼吸・思考に影響が出る
- 自律神経(交感神経)の過剰な働きが、動悸・震え・汗などの症状を強める
- 無意識のルールや思い込みが、「危険信号」として脳に刻まれている
- 過去の経験や場面・状況が「症状スイッチ」として働いていることが多い
そして何より大切なのは、「自分のあがり症には、こういった背景や原因があったんだ」と客観的に理解できることです。
原因が分かれば、
・どこから整えていけば良いのか
・自分でできる対策は何か
・専門家に頼った方が良い部分はどこか
が、少しずつ見えてきます。
あがり症は、決して「一生治らない性格の問題」ではありません。
脳・自律神経・無意識の反応パターンを正しく理解し、適切なアプローチを行うことで、「緊張しても、自分らしく話せる状態」を目指していくことができます。
一人で抱え込まず、必要に応じて専門家にご相談ください。


