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ギターを弾いていると、
・なぜか指が勝手に動いてしまう…。
・押さえたい弦が押さえられない…。
・指が突っ張ったり、握り込んでしまう…。
そんな違和感や不安を感じて、「自分はもう弾けないのかもしれない」と悩まれていませんか?
もしかするとその症状は、「局所性ジストニア」と呼ばれる神経系のトラブルが関係している可能性があります。
実は、同じような悩みを抱えながらも、回復を目指して前進しているギタリストは少なくありません。
この記事では、
・「ジストニア ギター」の原因と仕組み
・ご自身の状態を把握するチェック項目
・改善のための具体的なアプローチ(セルフケア)
・当院にお越しいただいた楽器演奏者の施術前後の様子
などについてご紹介します。
最後まで読んでいただければ、
「自分にもできることがあるかもしれない」
「諦めずに向き合ってみよう」
そう思えるヒントと希望が見つかるはずです。
ギタリストのジストニアの原因

ギターを弾いていると、思ったように指が動かない。あるいは、動かしたくない指まで勝手に動いてしまう。
こうした症状は、外から見ると「力みのクセ」や「フォームの問題」に見えるかもしれません。
しかし、ジストニアの本質はもっと深いところにあります。
それは、**脳の運動プログラムが乱れ、誤った命令が筋肉に送られてしまう“神経の誤作動”**によって引き起こされると、私たちは考えています。

私たちの脳は通常、「この指をこう動かそう」と思ったとき、複数の筋肉に対して正確に指令を出し、協調した動きを生み出しています。
ところがジストニアになると、この運動のプログラムが乱れてしまい、
・本来は脱力すべきタイミングで力が入ってしまう
・1本の指を動かすつもりが、隣の指まで一緒に動いてしまう
といった意図しない異常運動が起こります。
これは、単なる疲労や練習不足によるものではありません。
脳内で神経ネットワークが混線し、誤った運動学習が自動的に繰り返されてしまう「神経系の障害」なのです。
ジストニアを引き起こす背景には、**本人も気づかない“無意識の思い”**が隠れていることがあります。
たとえば、
「もっと完璧に演奏しなければ」
「ミスをしてはいけない」
「評価されなければ意味がない」
こうした思いは、意識的に考えているわけではなく、長年の練習や舞台経験、人間関係などを通じて、無意識の中に根付いていくものです。
そしてその思いが、
・力を抜いてもいいはずのところで力が入る
・自然に動くはずの指に、意識的に命令を送り続ける
といった形で、身体の“緊張パターン”として固定化されてしまうのです。
さらにやっかいなのは、このような無意識の緊張状態が繰り返されると、脳がそれを「正しい動き」として学習してしまうことです。
つまり、本来とは異なる筋肉の使い方が“無意識の正常”として記録されてしまうため、意識的に修正しようとしてもうまくいかない状態に陥ってしまいます。
また、ジストニアの原因は精神面や技術的な要因だけではありません。
・講師との関係性(人間関係)
・過度なプレッシャーのかかる舞台経験(過去の経験)
・周囲の評価を強く気にする環境(シチュエーション)
といった人間関係や外部環境も影響していることがあります。
これらのあらゆる要因が複雑に絡み合って、無意識に身につけてしまった「緊張のクセ」がジストニアです。
だからこそ、まずはこの仕組みを正しく理解し、「なぜ今、こうした動きが起きているのか?」という視点で、焦らず自分の体と向き合っていくことが大切です。
まずは、自分の「意識の層」を知ることからはじめましょう
演奏時の不調やジストニアの症状は、単に身体の問題に見えるかもしれませんが、その背景には、**意識できていること(意識)だけでなく、無自覚なプレッシャー(前意識)や深層にある思い込み(無意識)**が複雑に絡み合っていることがあります。

なので「意識」「前意識」「無意識」の3つの階層に分けて整理していきしょう。
3層チェックリスト|あなたの「意識・無意識」に潜む緊張のクセを見つけよう

これからご紹介するチェック項目はあくまで例ですので、必ずしもそのレベルというわけではございません。あくまで参考としてご覧ください。
また、無意識の真相が見えてこないと解決しないというわけではありません。ここに個人差があります。
意識的な層に対して、緊張をとったり、「こうすると上手くいく」という気づきが得られることで解消されていく方もいらっしゃいます。
それでもどうしても上手くいかないと感じる場合は、「前意識」「無意識」に目を向けていく必要があるかもしれません。
【意識】レベルのチェック(自覚している行動・不調)
☐ この動きの時に指が思うように動かず、巻き込まれる・突っ張る・固まる
☐ トレモロやアルペジオなど特定の奏法でミスが増える
☐ 肩や肩甲骨、上腕に慢性的な疲労やコリを感じる
☐ 「もっと脱力しないと」「姿勢を直さないと」と考えすぎる
☐ スムーズに速弾きできないことに焦りや苛立ちを感じる
☐ 練習中に「動きをコントロールしよう」と意識が過剰になる
これらのチェック項目は、演奏中に感じる「困っていること」「改善したいこと」が中心です。
チェックが多い方は、ご自身の症状について把握できていると思われます。
この部分が把握できているからこそ、「意識的な努力」で何とかしようと、さらに練習を頑張ってしまい、自暴自棄になっているのではないでしょうか。
【前意識】レベルのチェック(気づいていないが影響している思考)
☐ 「プロなんだから、失敗は許されない」と思っているところがある
☐ 人前での演奏になると、上手く弾かなきゃと思っているところがある
☐ 先生や師匠に「うまく弾けていると思われたい」と強く思うところがある
☐ 演奏中に「聴いている人はどう思っているだろう」と気になるところがある
☐ 少しのミスでも強い自己否定を感じるところがある
ここにチェックがつく方は、普段は意識していないが、演奏時の反応や緊張に影響を与えている可能性がある「信念・価値観」の入り口部分が見えているかもしれません。
ですが、まだ脳の誤作動が何によって引き起こっているかが、はっきりとはわからない段階という方が多いです。
【無意識】レベルのチェック(深層にある思い込み・防衛反応)
☐ 「人に見下されたくない」「下手だと思われたくない」という気持ちが強い
☐ もっとできるはずなのに「できない自分」を認めたくない
☐ 失敗したら、“すべてが終わる”と思っている思考グセがある
☐ 演奏が完璧でなければ、人に受け入れてもらえないという思考グセがある
☐「自分には価値がない」と周りから思われたらどうしようと怖さを感じている
☐ 誰にも弱みを見せられない/本音を言えない。言うことはダメだという小さい時の教えがある
このチェックに該当する方は、すでに無意識のパターンに“気づき始めている”可能性があります。
ここまで整理できた方は、自分の内面にある思考パターンや反応パターンと向き合う準備ができ始めていると思います。
次は、これら3つのレベルに対応した具体的なセルフケアの方法について解説していきます。
意識・前意識・無意識それぞれにアプローチするセルフケア方法
ジストニアの回復には、「無理に治そう」とするよりも、「気づき → ゆるめる → 書き換える」という段階的なアプローチがカギになります。
【意識レベル】のセルフケア
ステップ①:自分の体を“客観的に観察する”
まず大切なのは、自分の体を他人の目で見るように観察することです。
・どのフレーズや姿勢で指が巻き込まれるのか?
・どんなタイミングで手首や肘に力が入りやすくなるのか?
・調子が良いときと悪いときで何が違うのか?
これらを観察するには、自分の演奏をスマートフォンなどで動画撮影するのがおすすめです。
再生しながら以下の点を確認してみてください。
指の角度や姿勢の違いはあるか?
手首や肘、肩の緊張はどうか?
背中が巻き込むような姿勢になっていないか?
ここで重要なのは、「うまく弾けていない自分はダメだ」と主観的評価をしないことです。
あくまで「ひとりの演奏者」として冷静に観察し、「もしかしてここが変かもしれない」と気づく視点を持ちましょう。
ステップ②:無駄な緊張をリセットする身体ケア
気づいた緊張に対しては、筋肉や関節に直接アプローチして、脱力の感覚を取り戻すケアを行います。
おすすめのセルフケア法:
・手、肘、肩の関節を軽く引っ張る、ひねる、タッピングする
・関節を軽く曲げた状態で深呼吸する
・手を垂らして手首をゆらゆら揺らす「振動ゆらし法」
・指、手のひら、前腕〜上腕のマッサージ(特に使いすぎている部位を中心に)
身体に対するセルフケアで特に重要なのは、【どの姿勢・どの角度で緊張が起きるか】を意識して行うことです。
指の角度が少し変わるだけで緊張が強まることもあります。
ギターを持った姿勢になると途端に緊張が増すという方も多くいらっしゃいます。
そのため、どの姿勢・どの関節の角度で力が入るのかをご自身で把握し、そこを丁寧にケアしてみてください。
【前意識レベル】のセルフケア| 無自覚な思考のクセに気づくための内面ワーク
「人前で失敗したくない」
「ミスは許されない」
もしあなたが、そんな思いを自分でも気づかないうちに抱えていたとしたら、その緊張感は、演奏時の身体の反応に強く影響しています。
前意識レベルのセルフケアでは、“自分の思考グセ”に光を当てることを目的とします。
ステップ①:緊張する場面を思い出して書き出すワーク
まずは、以下の質問に対して紙やスマホのメモに書き出してみてください。
・演奏中、どんな場面で緊張が強くなるか?
例:人前での演奏/録音中/師匠の前/難しいフレーズを弾くとき
・そのとき、心の中で何を考えているか?
例:「ミスしたら評価が下がるかも」「下手って思われたくない」
・それは、いつ頃からそう思うようになったか?
漠然とでも構いません。きっかけがあれば書いてみましょう。
【ポイント】
このワークでは、「正解」や「答え」を出す必要はありません。
「こんな気持ちが自分にあるかもしれない」と見つめること自体が、気づきの一歩になります。
ステップ②:思考の書き換えワーク
書き出した考えに対して、少しずつ“言葉の解釈”を変えていきましょう。
例
「ミスしても、価値が下がるわけじゃない」
「評価より、自分がどう感じるかも大切にしていい」
「完璧じゃなくても、音楽を伝えられる力はある」
こうした意味の再解釈は、前意識の思い込みをやわらげ、脳の緊張状態をゆるめるきっかけになります。
【補足】
このワークを行っている時に、「けど…」「でも…」といった言葉が心に浮かぶ場合は、さらに深い無意識の領域に、緊張を生み出す思考グセや感情が隠れているサインかもしれません。
例:「ミスしても価値が下がるわけじゃないけど、、、」みたいな感じです。
このような「引っかかり」がある場合は、次の【無意識レベル】のケアが必要になってきます。
【無意識レベル】のセルフケア|身体に現れる“深層の緊張”にアプローチする
無意識の領域にある信念や感情は、言葉ではなく「身体の反応」として現れます。
「頭では大丈夫だと思っているのに、体に違和感がある」
「手が固まってしまう」
「自然に動かせない」
こうした現象は、まさに無意識の影響が色濃く出ているサインです。
ここでは、身体感覚とイメージワークを通じて、無意識にアプローチする方法をご紹介します。
ステップ①:身体の反応を丁寧に観察する
演奏中や練習の前後で、ふと手や肩がこわばる瞬間があったら、動きを止めてこう問いかけてみてください。
・今、自分は何を感じていた?
・どんなことを思っていた?
・何を気にしていた?
【ポイント】
意識すべきは「動き」ではなく「内面の反応」です。
うまく言葉にならなくても大丈夫です。
「不安」「怖さ」「否定されたくない」など、感じたままを受け止めましょう。
ステップ②:出てきた感覚を意識したまま演奏してみる
前のステップで「怖さ」や「不安」などの感覚が出てきたら、その感覚を意識したまま、もう一度同じフレーズを弾いてみてください。
確認するポイント:
・指や手首のこわばりは変わったか?
・呼吸の浅さや、構える前からの緊張はあるか?
・緊張が「演奏のどの瞬間」に出てくるか?
もし再び同じ反応が現れるとしたら、それは無意識の中にある“思考”や“感情”が、演奏に影響している可能性が高いというサインです。
ステップ③:その感覚の背景を言葉にしてみる
ここからが、無意識レベルのセルフケアの本質です。
感じた感覚に対して、また問いかけてみてください。
なぜ、怖かったのだろう?
その不安はどこから来ている?
過去に似たような体験があった?
など、このような問いを通じて、説明できなかった感覚を少しずつ“言葉”として形にしていきます。
これはまさに、“無意識の自分”を意識の世界へ引き上げていく作業です。
【無意識の自分を言葉にしていくこと】が、回復の鍵になります。
ステップ④|見えてきた“緊張のクセ”を把握して、思考を書き換える
問いかけを通じて、
「評価されないと価値がないと思っていた」
「失敗=すべてが終わるという思い込みがあった」
など、
過去の経験や思考グセが浮かび上がってきたら、それを以下のように言い換え・再解釈してみてください。
▼リフレーミングの例:
「失敗しても、それが自分の価値を決めるわけではない」
「評価を気にしすぎず、自分が納得できる演奏を大事にしたい」
「できないことがあるのは、変化や成長のきっかけでもある」
こうした「気づき→把握→書き換え」を繰り返していくことで、思考から生まれる緊張のパターンが少しずつほどけていきます。
野網惠・坂本崇・髙橋祐二(2022)「本邦のプロフェッショナル演奏家におけるMusician’s Dystonia発症前後のストレスに関する実態調査」『精神神経学雑誌』第124巻第3号,157–167頁にも下記のように述べられています。
MD発症周辺期には心身の保養をすること,発症後は心理教育的介入,認知および不安への介入が大切であると考えられた.
今後、MDで困っている演奏家のために、医学的治療、脳科学的治療、理学療法、教育法、有効な民間療法などに心理支援が組み合わされて、個々の演奏家に応じた統合的な支援が行われるようになることを望む.そのためには、支持的精神療法、認知行動療法、弁証法的行動療法、およびトラウマ療法など心理療法のMDへの応用も積極的に検討される必要があると考える.
ですが、無意識に触れる作業は、ときに心に大きな負担をもたらします。
「なぜ緊張するのか、やっぱりわからない」
「原因が見えてこない」
そんな壁にぶつかることもあるかもしれません。
それはある意味、**脳があなたを守るために“見ないようにしてきたこと”**でもあります。
つまり、「本当は苦しい」「見たくない」「向き合いたくない」——そんな部分に触れ始めたサインでもあるのです。
このような部分になってくると、多くの方が意識的にこう感じることもあります。
「そこまでのことは、思っていなそう」
「自分に思いあたることはなさそう」
「そんなこと、自分には当てはまらない気がする」
実際、私たちの施術でも、“無意識の思い込み”に触れたときに「よくわかりません」「そういうことはないと思います」とお返事いただくこともあります。
そうおっしゃる気持ちもすごく理解できます。
それはあなた自身を守ってきた“心の防衛反応”だからです。
私たちは、そうした「向き合いたくない部分」にこそ、演奏を変えるヒントが眠っていることを、多くのジストニアの方と関わる中で実感してきました。
これはジストニアのお悩みに限ったことではないです。
なかなか治らない不調や生づさらを感じているときに、ここが影響していることがあります。
私自身も、この無意識の思いによって、行動に制限が生まれ、生きづらさを感じているときがありました。そしてその都度自分と向き合うようにしています。
なので、「そのようなことはない」と突っぱねるのではなく、もしあるとすれば?という視点で、頑張って柔軟に向き合ってみてください。
実際の施術でも無理に踏み込んだり、強引に聞き出したりすることは決してありません。
あなたのペースに合わせながら、“無意識と向き合える心と身体の準備が整うまで”しっかりと支えますし、一緒に解決する覚悟があります。
まずはご自身で上記のセルフケアを試みて、何か解決につながりそうなヒントが得られれば幸いです。
当院にお越しいただいた楽器演奏者の施術前後の様子
ギタリストのジストニア(ギターイップス)、手根管症候群にお悩みの方の初回施術前後の動画
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さらにフォーカルジストニアについての動画や症状発症のメカニズムなど知りたい方は、【治った!?フォーカルジストニアにお悩みの方の動画が多数】も併せてお読みください。
まとめ
ジストニアの原因は、単なる身体の使い方の問題ではなく、無意識レベルの緊張や思考のクセ、過去の経験による反応などが複雑に絡み合って起きていることが少なくありません。
「努力してもよくならない」
「練習しているのに悪化していく」
そう感じているなら、それは身体の症状だけを見ていても解決しないというサインかもしれません。
今回ご紹介した意識、前意識、無意識とそれぞれの階層にまずは目を向けて、セルフケアを行ってみてください。
私たちは、あなたの音楽が再び自由に響くよう、脳・体・心のすべてから丁寧にアプローチしていきます。
もし、セルフケアで行き詰まりを感じたり、「ひとりでは難しい」と思われたときは、無理をせず、いつでもご相談ください。
演奏の自由と楽しさを取り戻せるように真剣にサポート致します。
あなたのお悩みが解決されることを心から願っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。


