ジストニアの治療方法についてこのような事を知りたいと思っていませか?
- ジストニアの治療方法の種類は?
- ジストニアの予後は?克服出来るの?
- 注射や薬、手術以外の方法ってあるの?
そんなあなたの為にこの記事を書きました。
この記事を読めば
- 病院でのジストニア治療
- ジストニア治療の予後
- 自宅で出来るジストニア治療
を知る事が出来ます。
医学本や医学文献を参考に、また当院に来院し克服した患者様の内容を交えながら記事にしたのでお読みください。
ジストニアとは?
ジストニアという病気は、筋肉の緊張の異常によって様々な不随意運動や肢位、姿勢の異常が生じる状態をいいます。症状は筋肉の異常収縮によるものですが、筋緊張を調節している大脳基底核という部分の働きの異常によっておこると考えられています。
引用:脳神経外科疾患情報ページ
自分が動かそうと思っていないのに勝手に体が動いてしまう状態の事をジストニアと言います。また原因として考えられている大脳基底核は「感情」を司る機能もあり、感情が過度に高まる事により大脳基底核の異常が起こりジストニアとなります。
ジストニアの原因について詳しく知りたい方は下記の関連記事よりお読みください。
病院でのジストニア治療の種類
病院でのジストニア治療の選択肢として主に「ボツリヌス治療」「治療薬」「手術」があります。それぞれの有効性、副作用について解説していきます。
ボツリヌス治療
局所性ジストニアの第一選択として用いられます。
効果があればジストニアを克服する事が出来ますが、確実な効果はありません。
副作用として、運動神経の障害、感覚神経の障害、筋肉の索状硬化などがあります。
治療薬
治療薬は、有効性の低さや副作用からあくまでも補足的な役割で使用され、治療薬のみで治療をする事は稀です。
ただし小児では有効性が70%と高く治療薬での改善も期待できます。
副作用としてうつ病、アカシジア、パーキンソン症候群、ジスキネジア、高齢者では認知機能の低下があります。
ジストニアの治療薬について詳しく知りたい方はこちらのページからお読み下さい。
手術
ボツリヌス治療や治療薬で改善がみられない場合に選択されます。
主な手術の種類として末梢神経に対する『選択的末梢神経遮断術』脳に対する『定位脳手術』があります。どちらも構造的に異常がある場合は有効です。
副作用として創部感染や皮膚壊死が5〜20%の確率で起こります。また手術により死亡を含めた重篤な転帰をとる例は極めて稀です。
ジストニア治療の予後
病院でのジストニア治療の予後としては現在の医療では治る人もいれば、治らない人もいます。
治らない人がいる理由としてジストニアの原因を構造的異常として捉え治療をしているからです。前述したように、ジストニアとは大脳基底核の異常(心因的要因による)が関係しています。
もちろん構造的な異常に着目する事もとても重要な事ですが、実際に私達がみてきた患者様のほとんどが心因的要因が関係している場合がほとんどです。
どうすればジストニアはを克服出来るのか
ジストニアを克服する為にとても大切な事は
ジストニアが構造的異常以外の原因があるからこそ、病院で確実に治る方法がありません。
具体的に脳の機能や、心因的要因に対する治療方法はどうすればいいのか?
次の項目を参考に実践してみましょう。
薬や手術に頼らない克服方法–1 運動療法
ジストニアの症状が出ている場合の多くは、神経が異常な状態になっている可能性があります。その場合『どこの神経が異常になっているのか検査し調整する必要があります。』
下記を参考に実践してみましょう。
眼瞼痙攣の自己療法
眼瞼痙攣の場合「目が開けずらい」「目が閉じずらい」といった症状があると思います。最も症状を感じる動作をした後に2回深呼吸をして下さい。
下記の眼瞼痙攣に関係性がある筋肉、神経の検査の例を参考にしてみて下さい。
眼輪筋
眼球運動
対光反射
ペンライトなどの光を片目づつ当て違和感を感じる場合2回深呼吸をして下さい。
顎・口・舌ジストニアの自己療法
顎・口・舌ジストニアの場合、「顎が動かしずらい」「口が開きずらい」「口が閉じづらい」「舌が動かしずらい」といった症状があると思います。最も症状を感じる動作をした後に2回深呼吸をして下さい。
下記の顎・口・舌ジストニアに関係性がある筋肉、神経の検査の例を参考にしてみて下さい。
咀嚼筋
舌下神経
頸部ジストニアの自己療法
頸部ジストニアの場合「首が勝手に動く」「首が右を向いて戻らない」といった症状があると思います。最も症状を感じる動作をした後に2回深呼吸をして下さい。
下記の頸部ジストニアに関係性がある筋肉、神経の検査の例を参考にしてみて下さい。
前屈
伸展
側屈
回旋
副神経(僧帽筋)
副神経(胸鎖乳突筋)
体幹・体軸のジストニアの自己療法
体幹・体軸ジストニアの場合「座っていると身体が捻じれる」「立った姿勢を維持出来ない」といった症状があると思います。最も症状を感じる動作をした後に2回深呼吸をして下さい。
下記の体幹・体軸ジストニアに関係性がある筋肉の検査の例を参考にしてみて下さい。
前屈
後屈
側屈
回旋
股関節外転
股関節内転
股関節外旋
股関節内旋
喉頭ジストニアの自己療法
喉頭ジストニアの場合「声が途切れ途切れになる」「食べ物を飲み込みにくい」といった症状があると思います。最も症状を感じる動作をした後に2回深呼吸をして下さい。
下記の喉頭ジストニアに関係性がある神経の検査の例を参考にしてみて下さい。
舌咽神経・迷走神経
発声
あ・い・う・え・お、と声を出し違和感を感じる動作をした後に2回深呼吸をして下さい。
書痙・上肢のジストニアの自己療法
書痙・上肢ジストニアの場合「字が書きずらい」「常に手が緊張している」といった症状があると思います。最も症状を感じる動作をした後に2回深呼吸をしなて下さい。
下記の書痙・上肢ジストニアに関係性がある筋肉の検査の例を参考にしてみて下さい。
手関節屈曲
手関節伸展
手関節撓屈
手関節尺屈
肘関節屈曲
肘関節伸展
回内
回外
薬や手術に頼らない克服方法-2 心理療法
ジストニアを克服できない理由の一つとして、構造的異常しか着目していない事が挙げられます。
構造的異常とは、骨が折れている、血管が切れている、脳が萎縮している等の状態を言います。実際に私達がこれまで治療をしてきた患者様の多くは病院での検査で異常が無い。つまり構造的に異常がない方がほとんどでした。
構造的に異常が無ければ病院での治療も対症療法しか方法がありません。
では構造に異常が無いのに何故ジストニアとなるのか?
冒頭でお伝えしたようにジストニアは大脳基底核(体の制御、感情などを司る脳の部位)が関係しています。その為、ジストニアの多くは心理的要因が深く関係しています。
心理的要因として関係している事は4つあります。
- 何かのストレスに対して、ある感情が高まりすぎている
- 自分が求めている理想と現実にギャップがある
- 自分の「〜べき」「〜しなければいけない」というルールに、とらわれすぎている
- ジストニアを治す力にブレーキをかける思い込みがある
これらの心理的要因から大脳基底核の異常が起こり、ジストニアの症状が出現します。
ここから心理的要因をどのように克服すればジストニアが治るのか解説していきます。
自分を客観視することでジストニアを克服する
人間はストレスの捉え方により、同じストレスでも体に症状が出たり、出なかったりします。感情・理想・ルールや治す力にブレーキをかけている思い込みを認識する事が出来たら、そのストレスにこれは悪い事なんだと判断を入れてはいけません。客観的に受け入れるだけで脳はストレスの影響を無効化しジストニアを克服する事が出来ます。
参照元:ストレスの影響を認知が無効化する
その為には自分の心理状況を知る必要があります。
人間が持っている具体的な感情・理想・ルール・思い込みを下記の項目から、自分にはどれが当てはまるのか確認してみて下さい。
ストレスにより高まる9種類の感情
意欲
例:「子育てを頑張る」「趣味で始めた手芸に意欲的になっている」
義務
例:「母親として家事を完璧にこなす」「ママ友の付き合いを義務として感じる」
期待
例:「子供がもっと私の言う事を聞いて欲しい」「夫がもう少し協力的だったらと期待する」
喜び
例:「子供が成長して嬉しい」「家族で過ごす時間に喜びを感じる」
連帯感
例:「ママ友との繋がり」「旦那と一緒に子供を育てる連帯感」
優越感
例:「自分の方が優れている」「私の子供の成績がよくて優越的に感じている」
恐怖
例:「将来に不安がある」「このまま夫との関係が悪化することに恐怖を感じている」
逃避
例:「今の環境から逃げたい」「近所で苦手な人がいるから逃避したいと思っている」
劣等
例:「自分の方が劣っている」「ママ友の生活と自分の生活を比べて劣等感を感じている」
自分が求めている6種類の理想
安心・安定
例:これから子供の学費がかかってくるからもっと安定した経済的余裕が欲しい。
刺激・変化・挑戦
例:今の生活で満足はしているけど、新しい刺激や変化が欲しい。新しい事に挑戦したい。
存在感・重要感・特別感
例:母としての存在感が欲しい。家族から重要、特別なんだと思われたい。
つながり・愛情
例:家族とのつながりや愛情が欲しい。
成長
例:今の自分より人間として成長したい。
貢献
例:家族にだけでなく、地域の人や友人に対してもっと貢献したい。
「〜べき」「〜しなければいけない」という18種類のルール
自尊心
今までの人生経験から自分に誇りを持つべきだ。
例:母としてプライドを持ち子供を育てるべきだ。
自立心
今までの人生経験から自立をしなければいけない。
例:親から助けられずに自分で自立して生活するべきだ。
犠牲心
今までの人生経験から犠牲にならなければいけない。
例:子供の為に自分が犠牲になるべきだ。
利己心
今までの人生経験から自分の大切なものは守らなければいけない。
例:自分の家族を守るべきだ。
警戒心
今までの人生経験から警戒しなければいけない。気をつけなければいけない。
例:子供が道を外れないように気をつけるべきだ。
執着心
今までの人生経験から自分に必要なことに執着しなければいけない。
例:今の生活に執着するべきだ。
慈悲心
今までの人生経験から慈悲深い心を持つべきだ。
例:子供が困ったら助けなければいけない。
復讐心
今までの人生経験から自分を守る為に仕返しをするべきだ。
例:昔された事に仕返しをしなければいけない。
虚栄心
今までの人生経験から自分を良く見せるべきだ。
例:他の親よりも自分を良く見せるべきだ。
猜疑心
今までの人生経験から疑わなければいけない。
例:夫が家族の事を考えてくれているのか疑うべきだ。
団結心
今までの人生経験から団結しなければいけない。
例:ママ友との集まりを団結しなければいけない。
探究心
今までの人生経験から探求、追求しなければいけない。
例:趣味の手芸を追求して取り組まなければいけない。
競争心
今までの人生経験から競い合わなければいけない。
例:自分の子供が他のママ友の子供と競い合わなければいけない。
忠誠心・信仰心
今までの人生経験から自分が信じる者に従わなければいけない。
例:夫の意見に従わなければいけない。
自省心
今までの人生経験から自分に責任を持ち反省しなければいけない。
例:家事を完璧にこなせていない事に反省しなければいけない。
羞恥心
今までの人生経験から出来事に対して恥ずかしがらなければいけない。
例:子供の成績が悪い事に対して恥ずかしがらなければいけない。
同情心
今までの人生経験から人に同情しなければいけない。
例:友人が病気になった事に同情しなければいけない。
ジストニアを治す力にブレーキをかける3種類の思い込み
思い込みで本当に症状が出るの?と疑問に思うと思います。
実際の例として『幻肢痛』という症状を紹介します。
幻肢痛とは
四肢切断後の患者の80%以上は失った四肢が存在するような錯覚(phantom limb awareness)や失った四肢が存在していた空間に温冷感や痺れ感などの感覚(phantom sensation)を知覚し、これらの感覚経験を幻肢と総称する。幻肢は四肢切断でなくても、脳卒中、脊髄損傷や末梢神経損傷などの運動麻痺や感覚遮断によっても発症し、これらは余剰幻肢と呼ばれる。また、乳房や陰茎、眼球などの切除後にも幻身体は現れる。幻肢に合併する痛み(幻肢痛:phantom limb pain)の発症頻度は四肢切断患者の50-80%とされ、その長期予後は報告によって異なるものの大部分の患者では数年を経ても幻肢痛を伴う。
引用:東京大学 医学部附属病院
上記の様に実際に痛みの物質がなくても、脳が痛いと思い込めば痛みを感じ、脳が誤作動を起こし、動け!と命令をすれば自分の意思とは無関係に体は動きます。
ここからジストニアに関係がある思い込みを3種類紹介していきます。
過去の経験による思い込み
長い間ジストニアの症状が治らなかった経験から、ジストニアは治らないと無意識に思い込んでいる。
過去の情報による思い込み
インターネットでジストニアは治らないという情報を見た記憶から、ジストニアは治らないと無意識に思い込んでいる。
無意識にジストニアを治したくないとする思い込み
全ての人に当てはまる項目では無いですが、心理学では『健康でいる事で自分にとって失う事がある。』と潜在的に思う事があります。
例えば、『明日ママ友との付き合いでランチに行かないといけない。でも本当は付き合いが面倒だなぁ。体の調子が悪ければ行かなくてもいいのになぁ・・・』と自分に何かの症状があることの方がメリットがあると無意識に思います。
その結果、脳の防衛反応として実際に症状を引き起こす場合があります。
さらに詳しく例をあげるので参考にして下さい。
⒈正当な言い訳
例:ジストニアの症状がある事で家事をやらなくていい正当な言い訳が出来る。
⒉正当な評価
例:ジストニアの症状があるのに子育てを頑張っていると評価を高くして貰える。
⒊安心が得られる
例:ジストニアの症状がある事でPTAで大変な役割をしなくていい。
⒋周囲からの思いやり
例:ジストニアの症状がある事で家族から優しくして貰える。
⒌充足感や成長
例:ジストニアになり、健康についての大切さを学べた。
⒍被害者・犠牲者である承認
例:ジストニアに症状がある事で義母からの嫌がらせの被害者であると承認が得られる。
ここまでで大切なことは
ジストニアを克服した症例
痙性斜頸(首のジストニア)
- 自分が母として子供を育てなければいけない義務感
- 義母の嫌がらせから逃げたい逃避
- 家族からの愛情を得たいけど満たされていない
- 自分を守りたい利己心
- 自分が義母の被害者である承認を得たい
以上の事を認識した結果、痙性斜頸(首のジストニア)を克服する事が出来ました。
眼瞼痙攣(目のジストニア)
- 趣味の手芸をもっと上達したい意欲
- 家族との連帯感
- 周囲の人よりいい暮らしが出来ている優越感
- 自分の事は自分でしなければいけない自立心
- 過去に病院でジストニアは治らないと言われた記憶
以上の事を認識した結果、眼瞼痙攣(目のジストニア)を克服する事が出来ました。
まとめ
ジストニアの治療方法のまとめとして
- 病院ではボツリヌス治療・内服薬・手術の3通りある
- ジストニアは心理的要因の関係が深く構造面に着目した治療方法だと確実な治療方法は無い
- 体の機能に着目し適切な検査・調整をすれば克服出来る
- 心理的要因に着目しストレスに適応すれば克服出来る
この記事を読みジストニアの治療方法に対する知識が増え、あなたにあった治療方法が見つかれば幸いです。また病院での治療や、自宅での克服方法を試しても改善しない場合は脳と体、心と体の関係性に着目したプロフェッショナルにご相談される事をおすすめします。
最後までお読み頂きありがとうございました。
この記事の参考文献
- ジストニア診療ガイドライン2018:日本神経学会
- ジストニアのすべて:梶 龍兒
- 体の不調は脳がつくり、脳が治す:保井志之
- 「こころ」はいかにして生まれるのか最新脳科学で解き明かす「情動」:櫻井武
- コーピングのやさしい教科書:伊藤絵美
- 記憶と情動の脳科学:ジェームズ・L.マッガウ, 久保田 競, 大石 高生