坐骨神経痛で歩くのが困難、寝返りが困難、家事や仕事が出来ていない妊娠中の方へ。
産婦人科や整形外科を受診しても、薬も飲めないし、レントゲン撮影などもできず、出来る事はコルセットと安静と言われませんでしたか?
この記事を読むことによって、坐骨神経痛が及ぼす胎児や出産への影響や、妊婦特有の坐骨神経痛の原因、それから、自分でできる治し方までお伝えします。
医学文献や医学本を参照にしながら、また、当院へご来院頂く、妊婦の坐骨神経痛の患者様の話を交えながら、記事にします。
坐骨神経痛って何?
坐骨神経痛とは、坐骨神経とういうお尻から足にかけて伸びている神経のライン上が痛む場合につけられた名前です。
坐骨神経痛と妊婦の関係性
まず、坐骨神経痛を治すためには、医学的な根拠のある知識を学ぶ事が重要です。インターネットの普及で、様々な情報がありますが、医学文献で発表された情報は、信頼性が最も高いと思いますので、医学本や医学文献を元にお伝えします。
坐骨神経が圧迫されたから痛みがでるの?
「坐骨神経痛 妊婦」と検索すると、様々なサイトでお伝えしている共通の事がありました。それは神経が圧迫されて痛みが出ているとの事です。
しかし、これは全く医学的根拠のない内容です。
神経が圧迫されると、痛みは圧迫された瞬間のみであり、持続的に痛みが出るという事がありません。神経圧迫説は全く医学的根拠のない事実だと思ってください。
神経圧迫説で有名な椎間板ヘルニアと坐骨神経痛との関係性
妊娠前に椎間板ヘルニアになった事があり、もしかしたら、体重が増え、再発してのでは?と思われている妊婦さんもいらっしゃるようです。
ここでも、正しい医学知識を学んでいただければと思います。
椎間板ヘルニアは痛みは出ない!!これが正しい医学知識です。先程にも述べた様に、椎間板ヘルニアによって神経が圧迫された場合、痛みは一瞬出るかもしれませんが、痛みが持続することはありません。神経が圧迫されると痛みではなく、足の感覚が無くなったり、関節を動かしたくても全く動かないなどの、麻痺が起こります。
椎間板ヘルニアが腰痛や坐骨神経痛の原因という説は、もう医学的に古い情報です。
医学文献で詳しくお伝えすると、1995年、国際腰痛学会のボルボ賞を受賞した研究結果に、今現在椎間板ヘルニアと診断されたグループと、健常者(全く症状がない人)グループに分け、MRIで腰部椎間板を撮影しました。
結果は、椎間板ヘルニアと診断されたグループと全く同様、健常者(全く症状がない人)にも椎間板ヘルニアが見つかりました。
腰痛や坐骨神経痛など全く症状がない人にレントゲンやMRIを撮影しても、76%の方に椎間板ヘルニアが見つかります。
全国民の4人に3人は椎間板に何らかの異常があるのです。
よって、椎間板ヘルニアが坐骨神経痛に関与すると仮説した場合、全国民の4人に3人は坐骨神経痛である!という事になってしまいます。そんな訳ないですよね?
もう一つ医学文献で妊婦に特化した研究データがあります。
妊婦の椎間板異常を研究した医学文献があります。アメリカのワインレブらが研究したデータによると、妊婦と非妊婦の椎間板を検査したところ、椎間板異常の割合等に変わりはなく、妊婦だからといって椎間板に異常をきたす事ないと発表しています。
体重が増えた事と坐骨神経痛との関係性
体重が増えた事は、肉体的ストレスとして、確かに筋肉を緊張させる因子です。
しかし、体重増加だけが坐骨神経痛の原因とする事は無理がある様です。
もし、体重増加だけが坐骨神経痛の原因だとすると、妊婦の皆さまは坐骨神経痛に必ずならなければなりません。しかし、現実は皆さまなる事はございません。
この事から、体重増加が坐骨神経痛に大きく関与しているとは言えません。
反り腰(腰椎前湾増強)と坐骨神経痛との関係性
神経圧迫説と同様、「妊婦 坐骨神経痛」と検索すると、反り腰が腰痛の原因と書いてある記事がありますが、これも間違った情報です。
しっかりとした医学データがございますので、お伝えします。
スウェーデンのハンソンらの研究によると、慢性腰痛患者200人、急性腰痛患者200人、健常者200人のレントゲン撮影をし、腰の湾曲の強弱を調べました。
結果は、3群ともに、湾曲の強弱の割合は変わらないという結果でした。この研究データから、背骨の反りが強い、弱い、側弯などの構造的な異常が痛みと無関係だという事が証明されました。
骨盤のゆがみと坐骨神経痛との関係性
あともう一つ、骨盤のゆがみが坐骨神経痛に関係するという記事が良く見られますが、これも誤った情報です。
整体やカイロプラクティック、治療院が増え、この様な情報が出回ってしまったのでしょう。でも間違った情報に惑わされてはいけません!「ゆがみ」「ズレ」説は一昔前の情報です。
ここで、医学研究の報告によると、アメリカのリヴァンジーは、腰痛患者144人と、健常者138人の骨盤の歪みを厳密に測定し、症状との関係性を調べましたが、骨盤の非対称性と痛みの関係性は全く関係していないと発表しました。
では、妊婦はどうして坐骨神経痛になるの?
基本的に妊婦の坐骨神経痛の痛みは、「筋肉の緊張及び、筋肉の機能低下によって関節が支えられず負担がかかっている。」と「酸素不足」、この二つによって起こります。
そして、その痛みに過敏に反応し、「痛みを脳が記憶する。」患者様(急性から慢性へ移行したともいえる。)もいます。
では、なぜ筋肉が緊張するのでしょうか?そこに本質的な原因が隠されています。
筋肉を緊張させるのは、脳からの命令です。脳からの命令が末梢神経という道路を通って筋肉を硬くしたり、柔らかくしたり絶えず行っています。
腰の筋肉が緊張している、おしりの筋肉が緊張している、肩の筋肉が緊張しているという事は、その筋肉に脳が硬くなる様に命令しているとも言えます。
脳→末梢神経→筋肉という身体のメカニズムがあるという事を覚えていただけると、治す時も効率良く治す事ができます。
では脳が筋肉に緊張した命令を送ってしまう原因は?
その脳が筋肉に緊張した命令を送ってしまう原因とは、ストレスです。そのストレスを分類すると、下記の様に5種類のストレスに大別できます。
精神的ストレス
対人関係、先行き不安、過去の出来事など
環境的ストレス
環境アレルギー、環境汚染、騒音、高温、寒冷など
生物的ストレス
病原菌、ウイルス、動物、虫類
肉体的ストレス
外傷、同じ姿勢、長時間労働、単純作業
栄養的ストレス
食品アレルギー、栄養不足、飲食物の偏り、加工食品
ストレスの複合が脳を過敏に反応させ、筋肉に緊張の命令を伝えてしまう。
基本的に、一つのストレスだけで脳が過敏に反応し、人間は痛みや不調が起こるという事はありません。
いくつかのストレスが合わさり、ある程度のストレス量になると、脳が過敏に反応してしまい、脳がコントロールする筋肉や内臓などに影響が出てきます。
例えば、妊婦によって体重が増加したのも肉体的ストレスですが、他にも、妊婦としての立場で先行きの不安、職場での人間関係、夫婦間などの精神的ストレスも重なり、脳が耐えきれないストレス量になると、筋肉の緊張を命令してしまい、痛みなどの症状が誘発されます。
坐骨神経痛と胎児・出産への影響
妊婦の坐骨神経痛の原因を理解したところで、一つ不安要素は減ったと思いますが、もう一つ不安な事がありますよね。胎児と出産への影響です。
坐骨神経痛の原因は、様々なストレスの複合によって脳が過敏に反応してしまい、脳から緊張した命令を筋肉に緊張を引き起こし痛みを感じるとお伝えしました。
ここでもう一つ大切な事は、脳からの緊張した命令は、筋肉にも伝えるのはもちろん、他にも、内臓器、ホルモン(内分泌)、免疫などにも緊張した命令を伝えてしまう事です。
ここ20年程の日本の胎児の出生体重が200グラム低下している事に対し、先進国のため、栄養失調はないが、ストレスが原因ではないか?と研究が進められ、海外では、妊娠中のストレスが及ぼす様々な影響を医学研究として発表されています。
上記で述べた様にストレスによって脳が過敏に反応すると、末梢神経も興奮し、血管を縮める作用が働き、慢性的な血行障害となり、胎児に栄養が行き届かないというデータがあります。
以上の事から、坐骨神経痛になるほどの脳の緊張状態では、胎児も少なからず血液循環が正常に行き届いていません。その結果、胎児の出生体重の減少、ストレスホルモンの一つであるコルチゾールが胎児に増え、神経系(脳や末梢神経)の発達に影響すると考えられます。
自分でできる妊婦特有の坐骨神経痛の治し方
間違った情報(治らない情報)が治らなくしている事を認識する。
なかなか坐骨神経痛が治らない場合、無意識的に脳が治らない情報を信じ込み、学習記憶している可能性があります。
ご自身にこの様に質問してみてください。「なぜ、私は坐骨神経痛が治らないの?」
そうすると、この様な回答が得られる可能性があります。
- 体重が増えたから。
- 反り腰だから。
- 妊婦だから。
- 病院の先生に治りにくいと言われたから。
- 過去に椎間板ヘルニアって診断されて、レントゲン写真見たから。
- 病院でヘルニアかもと言われたから。
- インターネットと同じ様な症状を訴えている人が治ってないから。
- 本で治らないという情報を見たから。
これは、全て、こういう理由で自分は治らないという脳の記憶です。脳がその様に記憶すると、私の腰、おしり付近は「おかしい!」「もろい!」「悪い!」と判断していき、無意識的に腰や臀部をかばうため、筋肉の緊張を高める様に脳は絶えず命令を出す様に学習していきます。結果、坐骨神経痛が中々治らないという現象が起きます。
あなたの治らないという脳の記憶が、あなたの今の症状を治さなくしているとも言えます。
あなたは、なぜ、ご自身の坐骨神経痛が治らないと思っているのですか?是非、紙に書いてみてください。そしてその情報が治る力を制限している事を受け入れてください。
筋肉の異常を正常にする場合、まずは、末梢神経(脳の指令を筋肉へ伝える神経)の機能異常を正常に切り替える自己治療をします。
筋肉の異常を正常にするための、末梢神経レベルの調整には、2種類あります。
- 筋肉を緩める事ができない神経異常が起きている場合
- 筋肉に力を入れる事ができない神経異常が起きている場合
筋肉を緩める事ができない神経異常を調整する方法
手順は、
1.関節を色々な方向に動かし、ご自身の感覚で左右差で違和感や痛みを感じたり、動きが硬い方向性を見つけます。
2.動きの悪い、痛みがでる動作が見つかったら、体勢を元に戻し、その動きの悪さや痛みを感じた部分の筋肉が緩まる様にイメージし、深呼吸し、息を吐ききった際、胸の軽く「トントン」と叩いて調整して下さい。
3.「トントン」と叩いて調整した後、もう一度、先程の動きの悪い、または痛みがでる動作をしてみて変化を感じてみてください。もし、変化がない場合、もう一度その部分が緩まるイメージをし、深呼吸し、息を吐ききった際に、胸を軽く「トントン」と叩いて調整してください。
4.変化がなくなるまで、3回程同じ動きで調整し、今度は他の方向性に関節を動かし、同じ調整を繰り返します。
※最低でも3日繰り返してください。徐々に動きがスムーズになったり、可動域が広がったり、痛みが軽減したり、変化していくはずです。
下記に坐骨神経痛の時に調整する身体の方向性を写真でアップします。同じ動きを真似し、動きが悪い、違和感が出る、痛みが出る動きがあり次第、調整してください。
※注意、バランスが上手く取れない方は何かに掴まって行うか、座ったまま行っても大丈夫です。また、痛みが強い場合は無理のない範囲で行ってください。
筋肉に力を入れる事ができない神経異常を調整する方法
上記で説明した、筋肉を緩める事ができない神経異常を調整する方法と殆ど同じですが、違う点は、
動きが悪い、痛みがある、力が入りにくいなどの動作の方向性を確認したあと、元の体勢に戻し、異常の感じる部分に力を入れるイメージをして、深呼吸し、胸を「トントン」と叩く事です。
末梢神経の機能異常を取り除いても坐骨神経痛が改善しない方は、脳の緊張パターンをリラックスパターンに切り替える自己治療をします。
3日間、末梢神経の調整を行っても、違和感がある方向性があったり、痛みが出たり、力が入らない感覚が残る場合、神経の王様である、脳へ直接アプローチする必要があります。
脳がなぜ緊張パターンになるのには、ストレスが原因だとお伝えしました。
そこでストレスによって脳が影響しない様に調整する事が必要です。
日々の日常生活の生活習慣を紙に書いてみる。
24時間枠で起床から睡眠までの間のご自身の行動などを全て書きます。
できれば、その時その時の気分(感情)状態や痛みの強さ、そして誰といるのか?など回りの人間関係もしっかりと書くと良いでしょう。
どこに問題点があるか?考えてみる。
上記の日常生活の紙を見ると、
- いつも夫が家にいる時間に痛みが強くなる。
- 仕事中にいつも痛みが強く出ている。
- 朝よりも夜の方が痛みが強く出ている。
- 子供と言い合いをした後に痛みが強く出ている。
- 親と喧嘩した後に痛みが強く出ている。
- 台所で痛みが強く出ている。
- 友人と遊びに行こうとすると痛みが強く出ている。
- 外に歩きに行こうとすると痛みが出てくる。
- 寝てれば痛くないのに、起きると痛い。
など痛みがずっと同じではなく、偏りがありませんか?何か根本的な原因が隠れていそうな時間帯や人間関係を見つけてみてください。
その他、日常生活の見直しも大切です。
- 睡眠はしっかりととっているのか?
- 食事や栄養はしっかりととっているか?
- 運動不足はないか?
その問題点が痛みに関係している事を受け入れる。
問題点として多いのが、潜在的(無意識的)に隠れている理想と現実のギャップが脳を過敏にさせ、筋肉を緊張させ坐骨神経痛がでています。
例えば、
- もっと安心・安定したいのに、現実は違う。
- 体重制限で増えすぎて、理想と現実が違う。
- 自分がもっと子供のためにしっかり育てたいのに、理想と現実が違う。
- 夫婦間で理想の愛され方、つながりが現実が違う。
- 夫にもっとこうしてほしいという理想と現実が違う。
- もっと妻として、会社員として成長したいのに、現実が上手くいかない。
- 自分の存在意義、承認欲求が理想と現実で違う。
- もっと、子供や配偶者、両親などに貢献したいのにできていない。
などが挙げられます。
まず、日常生活の生活習慣を記入した紙を元に、理想と現実にギャップがあるところを探してみてください。
そしてその、ギャップがある時のご自身の気分を書いてみてください。落ち込んでいる、頑張ろうとしている。不安になっている。恐怖を感じている。などです。
その気分(感情)と痛み(坐骨神経痛)が関係するパターン(クセ)が隠れているはずです。
そのパターン(クセ)をご自身が認識していくことによって、脳が勝手にリラックスパターンに切り替わり、ストレスに慣れていきます。
そのストレスに慣れていくことによって、坐骨神経痛は改善していきます。
※ポイントは、頑張ろうとしている!や喜んでいる!などのポジティブな気分(感情)の時も痛みが関係するパターン(クセ)を持っている方がとても多い事です。ネガティブ・ポジティブどちらの気分が自分の坐骨神経痛に関係しているかの特定してみてください。
ご自身のパターンに良し悪しの判断を入れず、自分の性格の癖だと認識し、受け入れる。
上記で、ご自身の痛みに関係するパターンを受け入れる際に、「私って酷い人間だわ。」「私って、悪い人間だわ。」「私ってなにもできない人間だわ。」「私って価値のない人間だわ。」と判断が入り、その判断によって、脳がさらに緊張するパターンを持っている人がいます。
判断を入れずに、それが、今の自分の坐骨神経痛に関わりがあるんだと思い、受け入れるだけで良いのです。良い、悪い、はありません。受け入れてい行くと勝手に脳は安定を取り戻し、痛みが消失していきます。
まとめ
いかがでしたか?坐骨神経痛の本質は、脳の緊張パターンが末梢神経を通じて筋肉へ影響し、筋肉の緊張及びその筋肉周辺の酸素不足によって痛みがでます。
そして痛みを記憶してしまい、慢性化する方もいます。
また、坐骨神経痛になるほどの脳の緊張パターンがあるという事は胎児にも血液循環の減少、そしてストレスホルモンによる、胎児の体重減少・神経系の発達異常への影響が懸念される事がわかりました。
しかし、この事を知り、不安や恐怖になる事自体もストレスになる場合もありますが、適切に対処すれば大丈夫です。自宅でできる治し方を実践し、それでも改善しない場合は、「痛み・神経・ストレス・記憶」などの関係性に着目したプロに相談しましょう。
この記事の参考文献
- 「腰痛」は終わる! 長谷川淳史著
- ヒーリング・バックペイン ジョン・J・サーノ著
- 心はなぜ腰痛を選ぶのか J・E・サーノ著
- 体の不調は脳がつくり、脳が治す 保井志之著