ギターのイップスでお悩みを抱えている方へ。
このようなお悩みを抱えていませんか?
- 一定のリズムでストロークできなくなり思うように弾けなくなった。
- 今まで普通にできていたコードを押さえる指が固まる、動かしにくい、力が入りすぎてしまう。
- 自分のフォームがわからなくなり弾けなくなる。
- 特定のメロディーになると指が動かない、またはストロークできなくなる。
- 指が丸まってしまい伸ばすことができない。
- 弾いていると肩や腕が痛くなったり、つるような感じがする。
以上のような悩みがあることで楽しいはずのギター演奏が辛くなっているのではないでしょうか。
そこでこの記事では、ギターイップスの原因とメカニズム、、克服方法や自宅で簡単にできる体操、実際にギターイップスを克服された患者様の例をお伝えしていきます。
石井堂クリニカルオフィスは、イップスに特化した治療を行なっており、ギタリストやピアニスト、フルート奏者などの音楽家をはじめ、1軍プロ野球選手、ツアープロゴルファー、男子サッカー日本代表選手、陸上日本代表選手、バレーボール日本代表選手、プロダーツプレイヤー、その他、テニスプレイヤー、卓球選手などのプロスポーツ選手のイップス治療に携わっております。
また、紅白に出場されているアーティストやアニメの声優、職場で上手く話せない、声が詰まる方などの声や喉に関するイップス、いわゆる発声障害などの治療も行なっております。
このような経緯もあり、令和2年に【不調が消え去る脳バランス体操】という本を株式会社KADOKAWAから出版させて頂き、この本でもイップスを克服するための方法を簡易的ですが触れさせて頂いております。
またこちらのサイトにも掲載されております。
この記事をお読み頂くことで治るための気付きが得られたら幸いです。
あなたの悩みであるギターイップスが1日でも早く克服できることを心より願っております。
音楽家を悩ませるイップスとは
イップスとはある特定の場面になると思うように体が動かせない状態になるとこを言います。
ギタリストを含め音楽家の場合は、
- ソロパートのとき
- スローテンポのとき、またはアップテンポのとき
- メンバーと練習するとき
- 観客を前にしたとき
- 特定の楽曲のとき
などの場面で指や手首、腕が思うように動かせないと訴える方が多いです。
しかしこのような症状が出ているのにも関わらず病院の検査では異常は見つからず「原因はわ分からない」「治療法はない」と言われた方や「ジストニア(フォーカルジストニア)」と診断された方もいると思います。
ではなぜ病院の検査では異常が見つからない場合があるのか、またイップスと言われたりジストニア言われる違いについてお伝えしていきます。
イップスとジストニアの違いについて
まずはイップスとジストニアがどのように定義されているかみてみましょう。
イップスをウィキペディアで検索すると、
イップス (yips) は、精神的な原因などによりスポーツの動作に支障をきたし、突然自分の思い通りのプレー(動き)や意識が出来なくなる症状のことである。本来はゴルフの分野で用いられ始めた言葉だが、現在ではスポーツ全般、またスポーツ以外の分野においても使われるようになっている。
引用:イップス ウィキペディア
と定義されています。
ジストニアは、
ジストニア(dystonia)は、中枢神経系の障害による不随意で持続的な筋収縮にかかわる運動障害と姿勢異常の総称。脳の大脳基底核、視床、小脳、大脳皮質などの活動が過剰になる異常が原因とされる運動異常症の症候名である。20世紀の一時期は精神疾患として誤った認識がされていた。
と定義されています。
このように2つを見比べてみると精神的な関与があるかないかで別れているため、病院の問診や検査によっては原因不明と言われたり、ジストニアと診断されることがあります。
しかしイップスとジストニアには共通している部分があります。
それは脳が関係していることです。
イップスの引き金となる精神的な情報(感情や思い)は脳が処理しています。
そして上記の定義からジストニアも脳が関係しています。
このようにイップスとジストニアの問題は脳にあり、根本的な原因は一緒であると言えます。
そこで次の章ではイップス(=ジストニア)の原因ついてお伝えしていきます。
ギター(楽器)イップスの原因は右脳か左脳、どちらかの働きが低下(過剰)している状態である。
ギターイップスの原因は脳の機能が正しく働かず、正しい命令を筋肉へ送れないことで起きます。
脳が正しく働いていないと言われてもピンとこないと思いますので、まずは脳の働きについてお伝えしていきます。
私たちの体(筋肉や関節)の情報は全て脳に送られます。
そして送られてきた情報を元にその時に適した命令を脳が出し環境に適応しています。
今もパソコンやスマホでこの文を読んでいると思いますが、意識せずとも姿勢を保つ筋肉に力をいれ、目を動かし文字を追い、指でマウスや画面をスクロールしているはずです。
また精神的な情報が脳へ入力された場合も体へ命令を出しています。
例えば不安や緊張を感じている人は足を揺すっていたり、心臓が早くなったり、手に汗を握ったりと精神的な情報が脳へ入力されたことで脳は体へ命令を出しています。
そのためもし脳がなくなってしまうと、
- 筋肉を動かすことはできません。
- 心臓を動かし血液を巡らせることや肺を動かし呼吸することなど内臓を動かすことができません。
- 楽しい、嬉しい、怖い、不安といった感情を感じることができません。
となります。
このように脳は全てをコントロールする王様と言えます。
この王様である脳の働きに問題が生じることで、コントロールを受けている体にも影響を与えます。
では脳の働きに問題が起きている状態とは、どのような状態なのでしょうか?
それは右脳と左脳のバランスが保てていない状態です。
脳は右脳と左脳で役割が違います。
右脳は主に直感や記憶、感情、イメージを司っており、左脳は計算や言語といった論理的思考を処理しています。
右脳と左脳で違う働きをする脳は、脳梁という神経の繊維を通じ連絡を取り合うことで左右のバランスを保っています。
しかしこの統合性が崩れお互いの命令に誤差が生じると体(筋肉や関節など)に影響を与えます。
例えば、過度に命令を出してしまうことで筋肉が緊張しスムーズに動かせない、または命令をうまく送れず正しい動きができない、脳に入力された情報を過度に感じ取ってしまうことで本来なら痛みとして感じない情報も痛みとして感じてしまいます。
では本当に脳の機能に問題が起きているのかを検査し、ギターイップスを克服する方法についてお伝えしていきます。
自宅で簡単にでるギタリストの脳の働きを安定させる克服法
ここでは2パターンの検査法とそのリハビリ方法、自分でできる克服法についてお伝えします。
検査とリハビリをするにあたり、最初の検査でご自身の状態を紙に書き出し、リハビリ後にどう変化したのか客観的に判断することで脳は学習し、繰り返し行うことで安定した状態を記憶していきますので紙に書き出してみましょう。
【バイバイテスト】
- まずはじめに両足を揃えて立ちます。
- 次に両手を前に出した状態で出来るだけ早くバイバイします。
- このときに両手とも上手くバイバイすることができない、またはどちらかの手が遅い場合は脳の機能が低下しています。
- 脳の機能を安定させるには30秒同じ動きをした後、深呼吸を2回行います。
【VORテスト】
- まず両足を揃えて立ち、左腕を前方に出し左手の親指を立てます。
- 次に立てた親指を見つめたまま顔を左に振り戻します。これをできるだけ早く行います。
- このときに顔を横に振りながらも目線は左手の親指を離さないように注意して下さい。
- そして右側も同様に行います。
- 以上の動作をした時にスムーズにできない、または目線が指から離れてしまうと脳の機能が低下した状態です。
- 上手くできない側を10回リハビリした後、深呼吸を2回します。
いかかでしたでしょうか?
どちらの検査もギターを弾くときに関わりのある動きになります。
ストロースするときに手首だけではなく前腕を回す動きが関係し、譜面やコードを抑える手に視線を移す動きなどになります。
上記の検査で左右差が見られたりどちらかの腕が早く疲れてくる場合は脳のバランスが崩れていますので継続して行うと働きは正常に戻ってきます。
しかしこのような単純な動きで左右差が現れている場合、通常の状態からかなり脳の機能が不安定な状態と言えますので体がうまく動かせないのは当たり前と言えます。
反対に左右差が見られない場合は、通常時の脳の機能は比較的安定しています。
しかし特定の情報が脳へ入力されたときに一時的に脳の機能が不安定になるパターンを学習している可能性がありますので、次にお伝えする自分で脳の機能を安定させる克服法を読み進めて頂けますと幸いです。
ギターなどの楽器イップスを引き起こす脳の不安定性を自分で安定させる方法
脳の機能を不安定にさせている要素は大きく分けて二つあり、
- 肉体にかかる偏った情報(刺激)
- 精神的な情報(刺激)
になります。
そのためこれらの情報に対して脳が不安定にならないように調整の刺激を脳へ入力していきます。
脳を不安定にさせる肉体にかかる偏った情報(刺激)を安定させる方法
私たちは普通に生活しているだけでも脳へは偏った刺激として入力されています。
例えば利き腕を使っていたり、立っているときに重心をどちらか片方にかけていたり、運動や姿勢などの偏りが生じています。
だからと言って左右バランス良く使えるようにならないといけない訳ではありません。
ギターや楽器といった左右異なる動きをすることで偏った刺激が積み重なり、次第に不安定性が増していくことがイップスを引き起こす1つの原因と言えます。
そしてギターや楽器のイップスで悩まされている方の殆どが肩こりや腕の張り、痛みを感じていますので、肉体を通して調整する刺激を脳へ入力し安定させる必要があります。
そうすることで結果として肩こりや腕の張り、痛みも解消されます。
調整の方法ですが、
- 肩や肘、手首をあらゆる方向へ動かします。
- 動かしたときに左右差、痛み、緊張、違和感がある方向は脳が不安定になり異常な命令が出されています。
- なのでその異常を感じるところで深呼吸を2回します。
となります。
下記に動かす方向を載せましたので参考に行ってみてください。
【肩周辺の調整】
【肘周辺の調整】
【手首周辺の調整】
脳を不安定にさせる精神的な情報(刺激)を安定させる方法
次に精神的な情報によって不安定になる脳を安定させる方法についてお伝えしていきます。
どのような精神的情報が脳を不安定にさせているか特定するためには、脳内を巡っている情報を言語化し認識する必要があります。
そこで特定の場面になると現れるイップスですが、なぜあなたの脳はその場面になると不安定になるのか?原因は何か考え紙に書き出してみてください。
一人一人理由は異なると思いますが例をあげると、
- 失敗するのが怖い。
- ミスをして恥をかきたくない。
- 周りから上手く見られたい。
- 完璧でなければならない。
- メンバーに迷惑をかけたくない。
などの気持ちが何かしらあると思います。
ではどうしてあなたの脳はそのような気持ちに不安定になると思いますか?とまた自分に問いかけてみてください。
この答えも人により異なるはずです。
このように出てくる答えに対して客観的に自分自身へ「どうして?なぜ?脳は不安定になるの?」と質問を投げかけ、その答えを言語化し紙に書き出して下さい。
「原因は何か?」からスタートし最初に出てきた答えと、質問を重ね最終的にできた答えは別のものになっているはずです。
その最終的に出てきた答えこそが脳を不安定にさせる精神的な要因であり、出てきた答えとイップスは関係していると認識することで脳は安定していきます。
また他にもイップスに繋がる精神的な要因は何があるかご自身に質問し考えることで脳は活性します。
勉強をして頭が良くなるのと同じで、考えを巡らせることで脳内の神経活動が活発になり、考えるという行為事態に意味があります。
なので答えが出なくても考えてみてください。その場で答えが出なくても後になって不意に出てくることもあります。
下記に実際に当院へ来院されギターイップスを克服された患者様の例を載せますので参考にして頂けましたら幸いです。
実際にギターイップスを克服された患者様の例
実際にご自身で行うときも「なぜ?」と質問をし答えを紙に書いていきます。
Mさんはライブなど人前で演奏するときだけストロークがスムーズにできなくなるという症状でした。
そこで原因に対して質問し返ってきた答えを書き出していきます。
ライブのときにミスをするのが怖い。
↓(どうしてミスをすることに脳は反応していると思いますか?)
過去のライブでミスをし恥ずかしい思いをしたから。
↓(どうして恥ずかしいことに脳は反応していると思いますか?)
一部の観客に笑われてしまったから。
↓(どうして観客に笑われたことに対して脳は反応していると思いますか?)
自分のプライドが傷ついた。
↓(どうして自分のプライドが傷ついたことに脳は反応していると思いますか?)
かっこいい姿を見せることができなかった。
↓(どうしてかっこいい姿を見せれなかったことに脳は反応していると思いますか?)
自分のベストな状態を見せることができなかったから。
↓(どうしてベストな状態を見せれないことに脳は反応していると思いますか?)
ファンにとって自分が特別な存在でなくなるのが怖いから。
という精神的な面に気づけたことで脳は安定し、その後も脳を不安定にさせていると思う原因をみていった結果、Mさんはギターイップスを克服することができました。
初めは難しいと思いますが、少しずつできる所まで行うことがイップスを克服する大きな一歩になりますので自分のペースで焦らず行ってみてください。
まとめ
最後にこの記事をまとめると、
- イップスとジストニアの定義に違いはあるが共通して言えることは脳の働きが不安定になり引き起こされている。
- 脳は全てをコントロールする王様であり、右脳と左脳で役割が異なるためお互いに情報を共有し体へ命令を出しているが、どちらかの脳の機能が不安定(低下または過剰)になることで正しい命令を体へ送れない状態がイップスである。
- 脳の機能を安定させる方法として脳バランス体操が効果的である。
- また体から脳へ刺激を入力することで機能を安定させることができ、痛みや張り、違和感が改善される。
- そして脳を不安定にさせる精神的な情報を安定させる方法として、「なぜご自身の脳が不安定になるのか?」と自分自身にす質問を繰り返し答えを言語化することで不安定にさせている要因が明確になり脳は安定する。
となります。
あなたの悩みであるギターイップスが1日でも早く克服でき、その後に待っている最高の結果を手にできることを心より願っております。
もし万が一こちらの記事を参考に実践しても克服できない場合は、脳と体と心の関係性に着目した専門家へご相談される事をお勧め致します。
この記事の参考文献
- SEKI神経学勉強会配布資料
- ジストニア診療ガイドライン2018:日本神経学会
- ジストニアのすべて:梶 龍兒
- 体の不調は脳がつくり、脳が治す:保井志之
- 「こころ」はいかにして生まれるのか最新脳科学で解き明かす「情動」:櫻井武
- コーピングのやさしい教科書:伊藤絵美
- 記憶と情動の脳科学:ジェームズ・L.マッガウ, 久保田 競, 大石 高生
- イップスの科学:田辺規充
- コーチング・クリニック:ベースボール・マガジン社
- イップス:澤宮優
- イップスは治る:飯島智則
- イップスかもしれないと思ったらまず読む本:河野昭典
- 不調が消え去る脳バランス体操:石井克昇
- 薬に頼らず家庭で治せる発達障害との付き合い方:Dr.ロバート・メリロ
- 心身条件反射療法研究会資料