バドミントンのサーブイップスでお悩みのあなたへ。
このような症状でお悩みではないでしょうか?
- 試合になるとサーブが入らなくなる。
- サーブのときに手が震え打てなくなる。
- サーブの打ち方がわからなくなり筋肉が固まる感じがする。
- 肩や肘、手首が固まる感じで思い通りに動かせなくなる。
- サーブを打つのが怖くなりバドミントンが楽しくなくなった。
普通に出来ていたサーブが急に打てなくなると怖くなり、楽しかったはずのバドミントンがいつの間にか辛く感じているのではないでしょうか。
私たち石井堂クリニカルオフィスはイップスに特化した治療を行なっており、
- 1軍のプロ野球選手
- ツアープロゴルファー
- 男子サッカー日本代表選手
- 陸上日本代表選手
- バレーボール日本代表選手
- プロダーツプレイヤー
- テニスプレイヤー
- バドミントン選手
- 卓球選手
- 紅白に出場されたアーティスト
- アニメの声優など声や喉のイップスである発声障害
- 楽器の演奏イップス
- その他
などスポーツ選手をはじめ様々なイップス治療に携わっております。
その経緯もあり、令和2年に【不調が消え去る脳バランス体操】という本を株式会社KADOKAWAから出版させて頂きこの本でもイップスを克服するための方法を簡易的ですが触れさせて頂いております。
そして実際に当院へ受診されたバドミントンのサーブイップスで悩まされていた患者様も克服し現在も活動を続けれられています。
そこでこの記事では、バドミントンのサーブイップスの原因とメカニズム、実際にイップスを克服した選手の例、そしてイップスの克服方法をお伝えします。
あなたの辛いイップスが1日でも早く克服できることを心より願っております。
バドミントンのサーブイップスとは
イップスとはウィキペディアに以下のように記載されています。
イップス (yips) は、精神的な原因などによりスポーツの動作に支障をきたし、突然自分の思い通りのプレー(動き)や意識が出来なくなる症状のことである。本来はゴルフの分野で用いられ始めた言葉だが、現在ではスポーツ全般で使われるようになっている。
また広辞苑には下記のように記載されています。
これまでできていた運動動作が心理的原因でできなくなる障害。もとはゴルフでパットが急に乱れることを指したが、現在は他のスポーツにもいう。
引用:広辞苑(第七版)岩波書店
そして実際に当院でバドミントンのサーブイップスで悩まれていた患者様のFさんは、サーブを打つときにネットに引っかかるんじゃないかと緊張し、その後腕が思うように動かなくなると訴えていました。
このことからバドミントンのサーブイップスとは、精神的な問題で筋肉に異常な命令が送られ体の動きに障害が起きている状態といえます。
バドミントンのサーブイップスの原因とメカニズム
上記のことから精神的な面が体に何かしらの影響を及ぼしていることがご理解いただけるかと思います。
ではなぜ精神的なことが原因で体に影響を及ぼすのでしょうか。
それは脳が関係しています。
ここで少し脳の役割をお伝えします。
人間は常に様々な情報を脳へ送っています。
五感(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚)や体内の出来事(体のエネルギーが足りなくなってきたので食べ物を取り入れてほしい、体の水分が多いから調節する必要がある)といった無意識に働いている情報もすべて脳へ送られ、その情報を元に脳が体へ信号を出しています。
またこの情報とセットになって必ず入力されるのが精神的な情報である【感情】になります。
例えばバドミントンのプレー中、マッチポイントの場面で相手のコートにシャトルが落ちたという視覚的情報と一緒に「嬉しい」という精神的な情報が送られ、その情報を元に脳は顔の筋肉を動かす信号を出し笑顔が作り出されます。
このように外から入ってくる情報と精神的な情報がセットになり脳は体に命令を出しています。
なので緊張する場面や恐怖を感じる場面で、「緊張しろ」「恐怖だ」と意識して感じている訳ではないと思います。
この精神的な情報である感情が、脳へ入力され意識に上ることで感情を表にだしたり心臓をドキドキさせる体の反応が起きます。
そしてバタミントンイップスの場合、ある特定の条件のときに感情が高まることで脳に誤作動を生じさせ正しい命令を体へ送れなくなります。
ある特定の条件とは、
- サーブの構えをしたとき
- シャトルを持ったとき
- ネットの前に立ったとき
- 特定の人物と対戦するとき
- 試合のとき
など人により特定の条件は異なります。
そして感情が高ぶりすぎると脳は誤った信号を体に出してしまうことがあります。
感情が高ぶりすぎて気を失ってしまう状態(恐怖で腰が抜ける、膝に力が入らないなど)がそれに近いです。
このように感情が高まりすぎることで脳が誤作動を起こし体に正しい命令が送れなくなり筋肉に影響を出した状態がイップスになります。
このようなことがバドミントンのサーブ時に起きることで思うようなプレーができなくなります。
ここまでをまとめると、
ある特定の条件
↓
感情により脳が誤作動を起こす
↓
脳が筋肉へ正しい命令を送れなくなる
↓
思うように筋肉が動かない(力が入りすぎる、力が入らない)=イップス
となります。
バドミントンのサーブイップスの乗り越え方とは
上記のところまででサーブイップスの原因やメカニズムはご理解いただけましたでしょうか。
次にサーブイップスを自分で乗り越える方法についてお伝えます。
まずはじめにイップスが起きているときにご自身にどのような【感情】が湧いているか意識に引き上げる必要があります。
そして意識に引き上げやすくするポイントとして紙に書き出ことです。
めんどくさいかもしれませんが実際に紙に書き出すことで目から情報が入り、手を動かすことで意識が集中し引き上げやすくなります。
感情を把握しやすいように患者様のFさんの例を交えながら書いていきます。
このように自分がイップスになっている場面から書き出すことで脳がイップスの出来事と感情の繋がりを整理できるようになります。
なのでご自身にどのような感情が湧いているか下記にバドミントンのサーブイップスに繋がる感情を挙げましたので参考にしてみてください。
- 意欲ー頑張る、達成する、成し遂げる、楽しい
- 義務ーしなければならない、やるべき、責任、任務
- 期待ー期待、待ち遠しい、可能性、良い結果を望んでいる
- 喜びー嬉しい、楽しい、満足
- 連帯感ー仲間意識、チームワーク、絆、団結心
- 優越感ー周りよりも優れている、出来がいい、満足、嬉しい
- 恐怖ー怖い、恐い、不安、不満、嫌だ、納得できない
- 逃避ー逃げ出したい、一緒にいたくない、避けたい、近寄りたくない
- 劣等ー他人より劣っている、過去の自分より劣っている、反省
バドミントンのサーブイップスを引き起こす感情がなぜ作られたのか認識する
ご自身に湧いていた感情を書き出し把握出来ましたでしょうか。
次になぜ感情が湧いたのかご自身の心の構造を認識する必要があります。
心の構造とは、ご自身の捉え方や考え方のことです。
この捉え方や考え方を把握し客観的に認識することで、なぜ自分の感情が脳の誤作動を起こし筋肉へ異常な命令を出していたかわかるようになります。
そして捉え方や考え方の根底にあるのが【価値観】と【信念】になります。
【価値観】とは、自分が求めているもの、自分が大切にしている気持ちになります。
【信念】とは、自分に対するルール(〜するべき、〜しなければならない)になります。
この価値観や信念のフィルターを通したときに現実の出来事に対してギャップがあると脳の誤作動を引き起こします。
この成長や存在価値を満たすためには簡単なサーブでミスをして負けることができない現実と、絶対に成績を残し成長と存在価値を示すんだという理想にギャップが生じたことで脳が誤作動を引き起こしていました。
しかし実際の試合で自分がサーブのときにネットに引っ掛けてしまったり、体が思うように動かせない感覚が現実では起きていることで理想と現実にギャップが生じていました。
このようにご自身にどのように価値観や信念があるか書き出し理想と現実の間にギャップがあるか客観的に認識することが重要になります。
下記に脳の誤作動を引き起こす感情を湧かせる価値観や信念を書き出したので参考にしてみてください。
この際に「こういう自分がいるかもしれない」と見るのがポイントです。
【価値観】
- 安心・安定を求める。
- 刺激や変化を求め挑戦したい。
- 自分の存在価値を大切にし特別感や重要感を求める。
- 周りとのつながりを大切にし、愛情を求めている。
- いまより成長したい。
- 貢献したい。
【信念】
- 自尊心:プライドをもつべき。自分に誇りをもつべき。
- 自立心:自立すべき。一人でするべき。頼るべきではない。
- 犠牲心:犠牲になるべきだ。我慢すべき。耐えるべき。
- 利己心:自分の利益を守るべき。
- 警戒心:警戒すべき。慎重になるべき。気をつけるべき。
- 執着心:こだわりをもつべき。
- 慈悲心:悲しむべき。助けるべき。困っている人に手を差し伸べるべき。
- 復讐心:やり返すべき。納得いかない。復讐すべき。
- 虚栄心:自分を大きく見せるべき。見栄を張るべき。
- 猜疑心:相手や仲間を疑うべき。自分の技術や考え方を疑うべき。
- 団結心:仲間やチームと協力すべき。
- 探究心:物事を追求すべき。探し求めるべき。
- 競争心:負けてはならない。競うべきだ。勝つべきだ。
- 忠誠心:尊敬できる人に従うべきだ。
- 信仰心:守らなければならい。大切にしなければならない。
- 自省心:反省すべき。
- 羞恥心:恥じるべきだ。
- 同情心:情けをかけるべきだ。
バドミントンで起きたトラウマがイップスを治しにくくしている場合がある
上記の方法を行う事でバドミントンのサーブイップスは乗り越えられると思います。
ですがバドミントンの最中に失敗した経験が強く根付いてしまうトラウマのような状態があるとイップスを治りにくくする可能性があります。
トラウマとは、失敗や挫折するような出来事が起きたことをずっと引きずってしまう状態です。
ではなぜトラウマがイップスを治しにくくするのでしょうか。
それは失敗した出来事に対して強烈な感情が湧いたことで記憶を強固に定着してしまうためです。
思い出の中で、楽しいときやすごく辛いときの記憶は鮮明に覚えていて、思い出すだけで楽しい気持ちになったり悲しい気持ちになったりしますよね。
それはまさに出来事に対して湧いた強烈な感情が記憶を強固にしているためです。
このように【経験による記憶】があることでイップスを治りにくくしている可能性があります。
また、【情報による記憶】がイップスを治りにくくしている場合もあります。
情報による記憶とは「イップスは治らないと言われた」「プロ選手もイップスで引退している」「明確な治療法がない」など様々な情報を見ることで脳が反復的に学習してしまい「イップス=治らない」という方程式が記憶に定着します。
なのでもしご自身がバドミントンに対するトラウマや情報の学習をしているようでしたら向き合う必要があります。
向き合う方法としては、先ほどのように紙に書き出し「このことがイップスを治しにくくしていた」と客観的にみて情報を上書きする必要があります。
イップスも見方を変えたらパフォーマンスの向上に繋がる!
ここまでに客観的に自分自身を見つめることがバドミントンのサーブイップスを乗り越える方法だとお伝えしてきました。
この客観的に見る力をつけることで自分自信を分析し、さらに成長をするチャンスとも捉えることは出来ないでしょうか。
楽しさや成長などを求め挑戦し、より良い自分を手にしようと思い行動した結果イップスになってしまったはずです。
なのでイップスも見方を変えると、まだ成長する伸び代があり精神的な能力(心と脳の繋がり)を向上をさせることでスキルやテクニックといった肉体的な能力をさらに引き出し、その後にまっている最高の結果を手にするチャンスです。
このチャンスを掴むためにもご自身と向き合い、心ー脳ー体の繋がりを安定させる必要があります。
安定させる方法としては先ほどお伝えした「乗り越え方」と、もう一つ簡単にできる脳バランス体操をご紹介します。
脳バランス体操とは、脳の機能を活性化させ脳から体(筋肉)へ命令を出す脳・神経の機能を調整する体操になります。
【回内回外テスト】
- まずはじめに両足を揃えて立ちます。
- 次に両手を前方に突き出した状態で早くバイバイします。
- このときに両手とも上手くバイバイする事ができない、または左右どちらかの手が遅い場合は脳の機能が低下しています。
- 脳の機能を安定させるために30秒同じ動きをしたのち、2回深呼吸をします。
【VORテスト】
- まず両足を揃えて立ち、左腕を前方に出し左手の親指を立てます。
- 立てた親指を見つめたまま顔を左に振り戻しす動きをできるだけ早く行います。
- このときに顔を横に振りながらも目線は左手の親指を離さないように注意して下さい。
- 右側も同様に行います。
- この動作をしたときに顔がうまく振れない、または目線が指から離れてしまうと脳の機能が低下した状態です。
- 上手くできない側を10回繰り返したのち2回深呼吸をします。
【肩周囲の検査・調節】
- 肩をあらゆる方向へ動かします。
- 動かしたときに左右差があったり、痛み、緊張、違和感がある方向は異常です。
- その異常を感じるところで深呼吸を2回します。
- 反対の肩も同様に行います。
【肘周囲の検査・調整】
- 肘の曲げ伸ばしを行います。
- 動かしたときに左右差、痛み、緊張、違和感がある場合は異常です。
- 異常を感じたまま深呼吸を2回行います。
- 反対の肘も同様に行います。
【手首の検査・調整】
- 手首をあらゆる方向へ動かします。
- 動きにくい方向、痛み、緊張、違和感があれば異常です。
- 異常を感じた状態で深呼吸を2回行います。
- 反対も同様に行います。
どの動きも自然とバドミントンのプレーで行なっていると思います。
なので脳バランス体操を行い機能を安定させる必要があります。
行なった後に効果がすぐ現れる人もいれば効果が現れるまで時間がかかる人もいるので継続して行うことが重要です。
バドミントンのサーブイップスとトラウマにお悩みの患者様からの感想動画
シニアの全国大会に出場しているバドミントン選手のサーブイップスとトラウマの克服の声を頂きました。
※結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
この記事をまとめると、
- イップスとは、精神的な要因(感情)が脳の機能に障害を起こし筋肉に異常な命令をだした状態
- イップスを乗り越える方法は、イップスのときに湧いている感情を把握する。
- 感情を生み出すご自身の価値観と信念を把握し、現実とのギャップを受け入れる。
- トラウマ(経験による記憶)や情報による記憶を書き換える必要がある。
となります。
イップスはご自身と向き合うことで克服できます。
はじめは中々スムーズに行かず結果が出にくいと思いますが、原因にフォーカスすることで徐々に変化が現れると思います。
もし万が一こちらの記事を参考に実践しても克服できない場合は、脳と体と心の関係性に着目した専門家へご相談される事をお勧めいたします。
最後までお読み頂きありがとうございました。
この記事の参考文献
- SEKI神経学勉強会配布資料
- ジストニア診療ガイドライン2018:日本神経学会
- ジストニアのすべて:梶 龍兒
- 体の不調は脳がつくり、脳が治す:保井志之
- 「こころ」はいかにして生まれるのか最新脳科学で解き明かす「情動」:櫻井武
- コーピングのやさしい教科書:伊藤絵美
- 記憶と情動の脳科学:ジェームズ・L.マッガウ, 久保田 競, 大石 高生
- イップスの科学:田辺規充
- コーチング・クリニック:ベースボール・マガジン社
- イップス:澤宮優
- イップスは治る:飯島智則
- イップスかもしれないと思ったらまず読む本:河野昭典
- 不調が消え去る脳バランス体操:石井克昇
- 薬に頼らず家庭で治せる発達障害との付き合い方:Dr.ロバート・メリロ
- 心身条件反射療法研究会資料