「ジストニア 治療」と検索されたあなた
『ジストニアの治療をしたいけど効果がある治療法が分からない。』『薬や手術の副作用が怖いからそのリスクを知りたい。』
あなたは今、そうお考えではありませんか?
『治療をしないといけない』分かってはいるけどなかなかその一歩が踏み出せないのは、治療法を選択する為の材料(知識)が足りていないからです。
そんなあなたの為にこの記事を書きました。
この記事を読めば一般の方にも分かりやすくジストニア治療の効果や副作用、さらには自宅で出来るジストニアの治し方まで知る事がで出来ます。
ジストニア治療の効果や副作用、自宅での治し方を、医学本や医学文献を参考にし、また、当院に来院するジストニアの患者様の内容を交えながら記事にします。
ジストニアの事を深く理解して、心身共に健康な身体を手に入れる為に、この記事がお役に立てば幸いです。
ジストニアとは?
ジストニアとはあまり聞きなれない言葉だと思いますが、軽症を入れると全国で約数万人以上にも及ぶとも言われています。
ジストニアの本態は筋肉の異常運動です。
筋肉は脳からの命令で動いていますが、脳が正常に働かないと筋肉の異常運動が起こります。結果として、反復する運動、ねじれを伴う運動、持続する姿勢異常、体のふるえ、開瞼困難、声のとぎれ、又軽症として頭痛、肩こり、腰痛等が起こります。
病院でのジストニア治療とは?
病院でのジストニア治療は大きく分けて①ボツリヌス治療②内服薬③手術の3通りあります。それぞれ病型及び罹患範囲により治療法が選択されます。
(1)ボツリヌス治療
ボツリヌス治療では、局所性ジストニア(ジストニアの症状が一か所)で使用されます。主に痙性斜頸(首のジストニア)・眼瞼痙攣(目の周りのジストニア)・痙性書痙(手のジストニア)・下顎ジストニア(顎周りのジストニア)等の限局したジストニアで使用されます。
治療頻度として週2回程度で10回程度反復し行い、効果を確認します。最初は比較的短時間の効果しか無いが、有効だと効果が次第に延長していきます。
主に局所性ジストニアで使用され、治療の効果があれば治療頻度は延長していきますが、確実に症状が改善される治療法ではありません。
(2)内服薬
内服薬治療では、全身性ジストニアやボツリヌス治療での効果が不十分な場合に選択されます。第一選択とする場合もあるが、有効率が低く、補足的に使用される場合がほとんどです。
成人以降のジストニアでは有効率は低いが小児では有効性が報告されています。また成人でもクロナゼパムは頭部振戦が優位な痙性斜頸(首のジストニア)、メキシレチンは眼瞼痙攣(目の周りのジストニア)、痙性斜頸(首のジストニア)、ゾルピデムは全身性ジストニア、痙性書痙(手のジストニア)での有効性が報告されています。
ジストニアの症状により有効性が高い内服薬は異なりますがあくまでも補足的役割が高い治療法となります。
(3)手術
ボツリヌス治療や内服薬での効果が見られない場合の次の選択肢として手術が選択されます。主な手術として脳深部刺激療法・視床凝固術・選択的末梢神経遮断術があり、それぞれジストニアの病型や罹患部位により異なります。
- 脳深部刺激療法では全身性ジストニア、遅発性ジストニア(内服薬によるジストニア)等で選択され有効性が認められています。
- 視床凝固術ではジストニアの症状が一側で上肢遠位部に限局する動作特異性局所性ジストニア(痙性書痙(手のジストニア)や音楽家のジストニアなど)で行われています。
- 選択的末梢神経遮断術では痙性斜頸(首のジストニア)等で異常収縮筋が常に一定で、不随意(勝手に筋肉が動く)な動きが少ない場合に行われます。
ほとんどの手術ではボツリヌス治療や内服薬での効果がない場合に行います。
西洋医学でのジストニア治療の副作用とは?
治療を受ければ当然リスク(副作用)はあります。ここでは治療法別にリスク(副作用)を解説していきます。
(1)ボツリヌス治療
ボツリヌス治療のリスク(副作用)として、長期的に使用すると筋組織の破壊、運動神経(筋肉を動かす神経)の障害、感覚神経(知覚や、痛みを感じる神経)の障害、さらには非可逆性(元に戻らない)の組織破壊を起こし、筋肉が索状に硬結する美容上の障害も考えられます。
(2)内服薬
内服薬のリスク(副作用)として、薬剤性ジストニア(内服薬によるジストニア)、アカシジア(座っていられない、足のむずむず感、じっとしていられない)、うつ病など、また高齢者では知能機能の低下も考えられます。
(3)手術
手術のリスクとしてジストニア発症から長期間経過している場合や、全身栄養状態が極めて悪化している場合は有効性は低くなります。
脳深部刺激療法では創部感染(手術部位の感染による発熱や痛み等)、皮膚壊死などの合併症が5~20%の頻度でみられます。
また手術による頭蓋内出血は1~2%の頻度で生じるが、死亡を含めた重篤な転帰をとる例は極めてまれです。
ジストニアの原因となりやすい人の特徴とは?
ジストニアはなぜ起こるのか?そしてなぜ自分がジストニアになってしまったのか?を知る事が出来ればジストニアの治し方も知る事が出来ます。大切な事は本当の原因に向き合う事です。
(1)原因
脳卒中や脳炎などの既往歴や、脳の構造的異常が無い(病院で異常が無いと診断された)場合は、脳の異常命令がジストニアの原因となります。
体を動かしたり、姿勢を保つには筋肉が正常に働く必要があります。この際に脳の異常命令があると筋肉も異常な動きをします、この状態がジストニアです。
では何故、脳が異常な命令を送るようになってしまったのでしょうか?そこにはストレスと深い関係性があります。
脳には体の動きを制御する部位と感情を司る部位があります。これらは密室な神経の繋がりがある為、ストレスを感じ感情が不安定になると体の動きを制御する部位も不安定になり脳が異常な命令を送るようになります。
例えば緊張すると声が上手く出なくなったり、上手く歩けなくなったりします。この時に脳では緊張というストレスで不安定になり異常な命令を送るようになり、筋肉が異常な動きをするので普段出来ていた当たり前の動きが出来なくなります。
この状態は特定の場面だけに限らず、日頃ストレスを感じている、過去の体験をストレスとして感じている、未来への不安や希望をストレスとして感じているなどで無意識的にストレスを感じている場合は常に脳が異常な命令を出し、常にジストニアの症状が現れます。
さらに詳しい原因を知りたい方はこちらのページからお読みください。
(2)ジストニアになりやすい人とは?
ジストニアはストレスと深い関係性があります。つまりジストニアになりやすい人とはストレスに正しく適応できていないという事です。
現代社会でストレスを完全に無くすというのは不可能です。大切な事はストレスを無くすのでは無くストレスに適応する事です。
ストレスに適応出来ていない人は、自分の感情を主観的に考え判断をいれている人です。例えば、『今私は緊張しているんだ、こんな事で緊張するなんて本当にダメな人間だ』『上司に怒られて悲しい、怒られるなんて自分はダメな人間だ』などとストレスにより受けた感情にダメな人間だと判断を入れて主観的に考えている状態です。
主観的に考え判断を入れるからこそストレスによる感情はより大きなものになり、脳は異常な命令を出すようになります。
大切な事はストレスにより起こる感情の背景を考え客観的にとらえる事です。
先程の例だと『今緊張しているのは、ここで成功すれば評価が上がり周りの人から認めてもらえる。私は周りの人から認められたいから緊張しているんだ』『上司に怒られて悲しいと感じているのは、私には仕事に対して自尊心(プライド)があり全て完璧にこなすべきだと思っているから悲しい気持ちになっているんだ』などです。
感情の背景が分かれば自然と客観的にとらえる事が出来ます。そうすれば感情は落ち着き、脳も異常な命令を出さなくなります。
自宅で出来るジストニア治療とは?
ここまでお読み頂いてジストニアの原因がストレスにより脳の異常命令が起こりその結果、筋肉の異常運動が起こってしまう事だと理解出来たと思います。ここから自宅でも出来る脳の異常命令を起こしている部位の見つけ方と調整方法、ストレスに対してどのように適応すればジストニアが治るのか解説していきます。
肉体的治療法とは?
脳の異常命令は精神的なストレスだけでなく、脳や身体の機能が低下している場合もストレスとなります。どの部位が機能低下しているのか検査し、調整する方法をお伝えします。
小脳の機能低下
痙性斜頸や書痙などの患者様は特に小脳の機能低下がみられる方が多いのが特徴です。
小脳とは主に目的の運動をする為にはどの筋肉をどの順番で動かせばよいかというような実行指令を作成し、その指令が正しく行われたかフィードバックし補正をする役割があります。小脳のどちらか一方が機能低下を起こすと脳内のバランスが崩れ、異常命令を起こす刺激となります。
自宅でも小脳の検査とリハビリが出来るので下記を参考にやってみて下さい。
①ロンベルグ徴候
両足を揃えてつま先を閉じて立ち、身体が安定しているか確認します。安定していたら次に目を閉じて身体の動揺がないか確認します。この際に身体がふらふらと動揺してしまったら小脳の機能低下が疑われます。
※このテストではふらついた際に周りに物があると大変危険ですので、一人でやらないように注意してください。
②片足立ち
目を閉じた状態で片足立ちをし10秒以上なら正常です。5秒以下なら小脳の機能低下が疑われます。
※このテストではふらついた際に周りに物があると大変危険ですので、一人でやらないように注意してください。
③両腕前方挙上
立った状態で目を閉じ、両腕を前方に床と水平になるように挙上します。この際に腕の高さに左右差があれば小脳の機能低下が疑われます。
④ピアノムーブメント
両腕を前に出してピアニストのように親指から小指にかけて順番に指をなめらかに動かします。この際に両手の指がなめらかに動かないもしくは左右差が出る場合は小脳の機能低下が疑われます。
⑥手の回内回外検査
両腕を前に出して手を回内回外(バイバイする動作)します。この際にどちらかの手が遅れたり、動かしづらかった場合には小脳の機能低下が疑われます。
小脳は繰り返し使えば機能は回復していきます。出来なかった項目を反復してトレーニングする事で出来なかった項目が出来るようになり小脳の機能が正常に戻ります。ただし反復してトレーニングしても変化が無い、または余計に出来なくなる場合は脳の休息が必要なお知らせです。その場合は無理をせずに休む事が重要となります。
脳神経系の機能低下
①舌下神経
発声障害などのジストニアの方に多いのが舌下神経の機能異常です。ベロを突き出した時にこわばりを感じたり、鏡で見たときに、右や左にベロが曲がっている場合は機能低下を表します。
調整法は、5秒間ベロを強く突き出した後、深呼吸を2回行います。
②顔面神経
まぶたにジストニア症状が出現している場合に多いのが顔面神経の機能異常です。お顔の右半分をしかめる、そして左半分をしかめる。この時にしかめずらい方や動きにくい方が機能低下を表しています。
調整法は、5秒間しかめずらい方をしかめて、その後深呼吸を2回行います。
③舌咽・迷走神経
発声障害などの口元、喉元にジストニアの方に多いのが舌咽・迷走神経の機能異常です。つばを飲み込もうとしたときに、ひっかりを感じたり、飲み込みにくさを感じる場合、機能低下を表しています。
調整法は、つばを三回飲み込んだ後、深呼吸を2回行います。
筋肉を硬くする神経、柔らかくする神経の機能低下
脳から筋肉を硬くしたり柔らかくする神経が出ていますが、これに異常が起きていると、筋肉が硬くなりすぎていたり、柔らかくなりすぎていたりします。異常が起きている神経を正常に戻すやり方をお伝えするので下記を参考にやってみて下さい。
痙性斜頸
①首、背中
前屈
後屈
側屈(写真は右側屈ですが、反対も行い、左右差を比較してみてください。)
回旋(写真は右回旋ですが、反対も行い、左右差を比較してみてください。)
上記の動きをして、動きずらい動作で機能低下を表しています。
調整法は5秒間動かしずらい動作をして、深呼吸を2回行います。
②股関節
外転
内転
外旋
内旋
上記の動きをして、動きずらい動作で機能低下を表しています。
調整法は5秒間動かしずらい動作をして、深呼吸を2回行います。
手首周辺のジストニア
屈曲
伸展
撓屈
尺屈
上記の動きをして、動きずらい動作で機能低下を表しています。
調整法は5秒間動かしずらい動作をして、深呼吸を2回行います。
肘周辺のジストニア
屈曲
伸展
回内
回外
上記の動きをして、動きずらい動作で機能低下を表しています。
調整法は5秒間動かしずらい動作をして、深呼吸を2回行います。
ふくらはぎ、足首周辺のジストニア
底屈
背屈
回内
回外
上記の動きをして、動きずらい動作で機能低下を表しています。
調整法は5秒間動かしずらい動作をして、深呼吸を2回行います。
口周りのジストニア
【あ、い、う、え、お】の口の動きをして、動きずらい動作で機能低下を表しています。調整法は5秒間動かしずらい動作をして、深呼吸を2回行います。
メンタル面治療法とは?
前述したように脳には感情(嬉しい、楽しい、悲しい、悔しい‥)を司る部位と体を制御する部位があります。つまり感情が脳を暴走させ異常命令を起こさせる要因となります。
まずは自分にとって何が精神的なストレスになっているかを紙に書き出してみて下さい。ここでいうストレスとはネガティブな事だけでは無く、ポジティブな事も入ります。
ジストニアに関係しているストレスは、症状が発症する前の事も関係している場合は多々あります。時間軸にとらわれずに過去、現在、未来でどのようなストレスが隠されているのか書き出してみましょう。
下記に例を上げるので参考にして下さい。
①旦那に対するネガティブなストレス
子供が就職をし夫と二人で暮らすようになった。最近夫は専業主婦をしている私に向かって「俺は仕事をしているから家事を完璧にこなすのは当たり前だろ!」と少しでも家事の手を抜いたら怒りをぶつけるようになり、夫といる時間がすごく憂鬱になる。この時私は家事の大変さを理解してほしいと期待するようになり、同時に怒りを感じるようになる。
②自分に対するポジティブなストレス
子供が就職し自分の時間が取れるようになり、以前から興味があった手芸教室に通うようになる。最初は楽しみながらやりたいと考えていたが、通い続ける内に資格を取って私も手芸教室を開いてみたいと意欲が湧いてきた。最近では楽しみたいではなく、上手くならなければいけないと義務感を感じるようになる。
例のように自分がどのようなストレスを感じているか紙に書いて明確にすることで自分の心の状態が具体的に理解出来るようになります。人間は誰しもストレスと共存していますが、どのような感情が隠されているか理解出来ていないと脳を暴走させる刺激となります。大切な事は何の刺激によりどのような感情になっているのか理解する事です。
より詳しいセルフケアの仕方は、心と体の整え方に書いてありますのでこちらのページもご覧ください。
当院へ通院していた患者様の症例報告
実際に当院に来院された患者様のジストニアと関係があるストレスをご覧ください。
⑴痙性斜頸(首が勝手に動いてしまう)
当院での治療として脳への刺激になっているストレスを検査した所、仕事での後輩からの言葉(嫌味)や姉として親の面倒をみなければならない使命感が脳への刺激となり、脳の異常命令が起こり、筋肉の異常運動が起こっていることがわかりました。そのストレスと症状の関係性を認識し調整した結果ジストニアを改善する事が出来ました。
⑵常に手が緊張してしまう
当院での治療として脳への刺激になっているストレスを検査した所、自分の中でのルールとして「自分は優秀だと思われるべき」という虚栄心が幼少期よりあったが、現実では優秀だと認められていない事が多くそのルールと現実でのギャップが脳へのストレスとなり脳の異常命令が起こり、筋肉の異常運動が起こっていることがわかりました。そのストレスと症状の関係性を認識し調整した結果ジストニアを改善する事が出来ました。
人間には誰しも「~すべき」「~すべきでない」というルールがあります。そのルールを否定する必要はないですが、「~した方がいいかもしれない」「~しない方がいいかもしれない」とそのルールを少しだけ緩めてあげると今よりもずっと過ごしやすくなります。
まとめ
いかがでしたか?ジストニアの治療方法の効果や適応症、リスク(副作用)をご理解頂けたでしょうか?
ジストニア治療は①ボツリヌス治療②内服薬③手術の3通りが主な治療方法です。この記事を読みさらには担当医と相談しあなたにあった治療方法が見つかれば幸いです。
またリスク(副作用)が怖い、薬や手術に頼りたくないのであれば、ここで紹介した自己療法を試してみて下さい。
ジストニアの症状が出てしまうのはストレスによる心のSOSです。この記事を読み実践して頂ければ肉体的にも精神的にも健康な人生を送れる事が出来るようになるでしょう。
この記事によりあなたの健康をお手伝い出来れば幸いです。
自宅でできる治し方を実践し、それでも改善しない場合は、「痛み・神経・ストレス・記憶」などの関係性に着目したプロに相談しましょう。
この記事の参考文献
- ジストニア診療ガイドライン2018:日本神経学会
- ジストニアのすべて:梶 龍兒
- 体の不調は脳がつくり、脳が治す:保井志之
- 「こころ」はいかにして生まれるのか最新脳科学で解き明かす「情動」:櫻井武
- コーピングのやさしい教科書:伊藤絵美
- 記憶と情動の脳科学:ジェームズ・L.マッガウ, 久保田 競, 大石 高生