ダンスのイップスにお悩みのあなたへ。
- 練習は問題ないのに、本番になるとミスをしてしまう。
- 今まで普通に体が動いていたのに、突然どうしても動かなくなってしまった。
- 練習不足だと思い沢山練習してもどんどん悪化する。
- 振りがどうしても覚えられない。
- 腕が上がらない。
- 体に力が入らない、または入りすぎる。
この様な症状にお悩みなのではないでしょうか。
今まで、当たり前の様に出来ていた事が突然出来なくなってしまうイップス。とても不安になりますよね。
このままダンスや踊りが出来なくなるんじゃないか?と恐怖まで感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事をお読み頂けますと、ダンスイップスの原因とメカニズム、それから自分でできるダンスイップスの克服方法、またその克服方法で改善したダンサーの例を知る事ができる様に作成しました。
私たちは、プロのダンサーはもちろんの事、プロゴルファー、1軍プロ野球選手、プロサッカー選手、プロダーツプレイヤー、その他ミュージシャンなどのプロスポーツ選手やプロアーティストの方のイップス・ジストニア治療に携わっている専門家です。
その経験を活かし、イップスの情報を皆様にシェアする事によって、あなたの辛いダンスイップスが一日でも早く克服できる事を心から願っております。
イップスとは?
イップスとは、広辞苑でこの様に定義されています。
これまでできていた運動動作が心理的原因でできなくなる障害。もとはゴルフでパットが急に乱れることを指したが、現在は他のスポーツにもいう。
引用:広辞苑(第七版) 岩波書店
また、ウィキペディアではこの様に述べられています。
イップス (yips) は、精神的な原因などによりスポーツの動作に支障をきたし、突然自分の思い通りのプレー(動き)や意識が出来なくなる症状のことである。本来はゴルフの分野で用いられ始めた言葉だが、現在ではスポーツ全般で使われるようになっている。
引用:ウィキペディア イップス
そして、イップスとは医学的には、ジストニアに分類される場合があります。
大阪大学 神経内科学では、下記の様に述べています。
「ジストニア」は、筋肉や骨に異常がないにもかかわらず、全身あるいは体の一部がねじれたり、固まったり、ふるえたりして思い通りに動かない症状を指します。遺伝子異常などで起こることもありますが、同じ動作を繰り返す楽器奏者、書記、スポーツ選手などでも発症するため、「職業的(性)ジストニア」と呼ばれます。仕事や選手生命を脅かす重大な問題ですが、どれくらいの患者さんがその症状に悩んでいるか、あるいは症状に関係する原因は何なのか、医学的背景について十分な検討はなされていません。
スポーツを例に考えると、平成23年に公表された統計では、日本のスポーツ人口は約7200万人にも及ぶとされています。 そのうち、特にゴルフ人口は約800万人と多く、ゴルフ競技者のうち2-4人に1人はこの症状に悩むという海外の報告もあり、潜在的に非常に多くの競技者が運動障害で悩んでいると推察されます。 一方、日本においては、これらの医学的な背景はもちろん、患者さんの数すら調べられていません。また、職業的ジストニアとして知られる書痙や奏楽手痙についても、脳のメカニズムや治療法に関して、十分な研究があるとは言えません。
イップス(Yips)は「ひゃあ」「うわっ」などの思わずもれる声を意味します。もっとも有名なのはゴルフのスイングにおける運動障害で、これまでスムーズに行えていたことが、突然途中で止まってしまったり、時にはピクっと跳ねてしまったり(jerk)、ふるえたり(tremor)、と様々な症状が出現します。もちろん、ゴルフだけではなく、イップスは野球のピッチングやテニスのサービスなど、他のスポーツでも見られます。
これまで、緊張・不安、自信の喪失といった精神的な側面が強調されてきましたが、筋電図などの研究で運動筋と拮抗筋のバランスが崩れるジストニアと類似した側面もかねてより指摘されてきました。
これまで、関連競技団体の協力を得てゴルフ選手へアンケート調査を行い、延べ2600人以上の回答を得ることができました。その中で、36%ものゴルフ選手がイップスを経験していることがわかり、その特徴が明らかになってきました(JNS2015, MDSJ2016 )。
引用:大阪大学 神経内科学
上記をまとめると、イップスとは、本来当たり前に出来た事が精神的な要因などによって出来なくなる事といえます。また、西洋医学的にイップスの事をジストニアと呼ぶ場合がます。
ダンスイップスの原因とメカニズム
では、ダンスイップスの原因とメカニズムについて説明します。
イップスの本質は、筋肉の運動障害を伴う事です。
どういう事かというと、いつもなら動かせる動作が出来ない。
すなわち筋肉が通常にはたらかないという事を表しています。これを筋肉の運動障害と呼んでいます。
もっと簡単に言うと、ある動作をしようとすると、筋肉に力が入りすぎたり、入らなかったりする事によって、ある動作が出来ないと言う事です。
では、なぜある動作をしようとすると、筋肉がおかしくなるのでしょうか?
その答えは「脳(のう)」にあります。
筋肉と言うのは、脳から神経を通じて命令を受ける事によって力を入れたり、力を抜いたりする事が出来ます。
イップスの場合、ある動作(ダンスをする事)に対して脳からの命令が安定しない事によって、筋肉に力が入りすぎたり、反対に力が入らなかったりします。
では、なぜ「脳(のう)」は筋肉に異常な命令を出してしまうのでしょうか?
その答えは、脳の中である特定の感情が働いているからです。
脳にある特定の感情が働く事によって、脳の働きに異常が生じ、脳から筋肉への異常な命令が伝わると言う事です。
例えば、とても緊張する場面で、歩き方がぎこちなくなる人や、肩に力が入りすぎている人を見た事はあると思います。
これがイップスに近い現象です。
それをダンスイップスに合わせながらまとめると、
ダンスをする。(特定の条件)
↓
脳の中で感情が働く。
↓
その感情によって脳が異常な働きになる。
↓
脳から命令を受ける筋肉に力が入りすぎる。または入らないなどの運動障害が起こる。
これがイップスの原因とメカニズムです。
ダンスイップスを自分で克服する方法
では、ダンスイップスを自分で克服する方法をお伝えします。
ダンスイップスを克服する手順は、
- ダンスイップスの引き金になっている、感情を把握する。
- その感情を引き起こす心の構造(心の奥底の構造)を把握する。
- その心の構造を強化した過去の記憶を把握する。
- その感情、心の構造、過去の記憶の一連のパターンがイップスに繋がっている事を客観的に認識する。
の4つのステップをまずは行います。
一人のダンサーを例にしてそれぞれのステップを説明していきます。
ダンスイップスの引き金になっている、感情を把握する。
まず、ダンスイップスの引き金になっている感情を把握します。
ダンサーAさんは、練習では普通に踊れるのに、本番になると、思う様に体が動かず、ミスをしてしまうとの事でした。
このダンサーAさんのイップスに引き金になっている感情は「恐怖」でした。
本番に対する恐怖です。これが引き金の感情です。
他にイップスの引き金になり得る感情を列記しますので、ご自身に当てはまるものがないか確認してみてください。
- 意欲・・・頑張る、一生懸命、達成、楽しみ
- 義務・・・しなければならない、やるべき、責任、務め、義理
- 期待・・・期待、可能性、当てにする、心待ちにする結果
- 喜び・・・満足、うれしい、楽しみ、達成感
- 連帯感・・・一体感、仲間意識、絆、チームワーク、団結
- 優越感・・・比べて優れている、満足、喜び
- 恐怖・・・怖い、恐い、嫌だな、不安、不満、納得できない
- 逃避・・・逃げたい、避けたい、一緒にいたくない、話したくない
- 劣等・・・他人より劣っている、過去の自分より劣っている、自分を卑下する、反省
などがあります。
その感情を引き起こす心の構造(心の奥底の構造)を把握する。
次に、イップスに繋がる感情を湧かせる根本的な心の構造を把握します。
根本的な心の構造とは、ご自身にどんな価値観や信念があるのかを表します。
価値観とは、人間が理屈抜きに求めるもの。
信念とは、今までの人生で学習した「〜すべき、〜しなければならない。」というルール。
この価値観や信念がある事によって、感情が湧くと言われています。
ではダンサーAさんを例えながら価値観と信念の把握の説明をします。
先ほど、ダンサーAさんは「本番に対する恐怖」がイップスに繋がっていました。
ではなぜその恐怖が湧いたのかというと、
【存在感・重要感・特別感】という価値観の理想と現実のギャップがありました。
【存在感・重要感・特別感】というのは、存在意義、承認欲求とも言える価値観であり、本番でミスをしてしまう事で、自分の価値がなくなるという捉え方がありました。
他に、【団結心】という信念も「本番に対する恐怖」に関係がありました。
【団結心】というのは、団結しなければならないというルールで、本番でミスをしたら、同じチームに迷惑をかけてしまうという捉え方がありました。
この様に、【価値観】や【信念】がある事によって【恐怖】という感情が湧いていた事が把握できました。
この様に、ダンスイップスに繋がる感情を湧かせるご自身の価値観や信念を把握してみましょう。下記にイップスに繋がる感情を湧かしやすい、価値観と信念を列記しますので、ご自身にないか当てはめて確認してみてください。
【価値観】
- 安心・安定を求める。
- 新しい刺激や変化を求め挑戦したい。
- 自分の存在意義を満たし、特別感や重要感を満たしたい。
- 周囲との繋がりや愛情が欲しい。
- さらに成長をしたい。
- 貢献したい。
価値観がイップスに繋がる感情を湧かせる場合、理想と現実にギャップがあるはずです。ご自身にどの様な価値観があり、理想と現実にどのくらいギャップがあるのか把握してみてください。
【信念】
- 自尊心・・・自分を誇りに思うべき。プライドを持つべき。
- 自立心・・・自立するべき。
- 犠牲心・・・犠牲になるべき。我慢すべき。
- 利己心・・・他人を犠牲にしても自分の利益を守るべき。
- 警戒心・・・警戒すべき。気をつけるべき。
- 執着心・・・良くも悪くもこだわりを持つべき。
- 慈悲心・・・困っている人に手を差し伸べてあげるべき。助けるべき。
- 復讐心・・・やられたらやり返すべき。納得いかない。しっぺ返しするべき。負い目を感じるべき。
- 虚栄心・・・自分を良く見せるべき。実際よりも大きく見せるべき。
- 猜疑心・・・人には疑いを持つべき。自分のスキルや考え方を疑うべき。
- 団結心・・・仲間と協力するべき。
- 探求心・・・物事を追求するべき。追い求めるべき。
- 競争心・・・競うべき。負けてはならない。絶対に勝つべき。
- 忠誠心・・・尊敬する人に従うべき。
- 信仰心・・・大切にするべき。こうでなければならない。こうしなければならない。
- 自省心・・・反省するべき。
もし、ご自身にイップスに繋がる信念を把握した際に、その信念がいらないと思われた場合、捨てる選択もできますし、大切に保有した方が良いと思われる信念は大切にしてください。しかし、その場合はご自身の信念に対する理想と現実のギャップがあるはずです。そこを認識してみてください。
その心の構造を強く形成した過去の記憶を把握する。
次に行うのは、その価値観や信念をどの時期に強化されたのかを把握します。
ダンサーAさんは、【存在感・重要感・特別感】と【団結心】がダンスイップスに影響していました。
【存在感・重要感・特別感】は、人に認められたいという価値観です。
例えば、小学校の時は全然周りの人に認めらてこなかった。ダンスに出会った事で、少しずつ認められる事が出来た。
【団結心】は、団結しなけらばならないという信念です。
例えば、昔に、失敗してまわりの人にイジメられた経験、失敗してまわりの人が離れて行った経験があると、団結心が強化されます。
この様に、ご自身の価値観や信念が強化された過去の経験や情報を把握してみましょう。
その感情、心の構造、過去の記憶の一連のパターンがイップスに繋がっている事を客観的に認識する。
今までの一連がイップスに繋がるご自身のパターンだという事を認識する事が大切です。
そのパターンが原因だと認識すると、徐々に心の変化が現れ、思考や行動に変化が伴います。
治らないイップスは意味記憶(経験的記憶、または情報的記憶)が関与している場合がある。
上記の克服の4つのステップを行ってもイップスが克服出来ていない場合、ダンスイップスが治らない学習を脳がしている場合があります。
治らない脳の学習は2つあります。
- 経験に基づいた治りにくい脳の学習記憶
- 情報に基づいた治りにくい脳の学習記憶
の2つです。
経験に基づいた脳の学習記憶がダンスイップスが治りにくくしている場合
これで多いのが、「ずっとイップスだから治らないはずだ!」という学習です。
「ずっと長い間イップスだから治らない」という思い込みを脳が学習している場合、自分の悪いところを探す傾向になります。
その「治らないはずだ!」という学習そのものが治りにくくしているという事を客観的に認識する必要があります。
情報に基づいた脳の学習記憶がダンスイップスを治りにくくしている場合
これで多いのが病院や治療院の先生に「イップスは治らない。」と言われたという情報です。
専門家に治らないという言われると、「治らないんだ。」という学習を脳がしてしまいます。
他に、インターネットで治らない人のブログを読んだ。イップスは治りにくという記事を読んだ。という学習もイップスを治りにくくしている原因です。
その情報って本当にそうなの?と疑問を持ってください。
スポーツを真剣に取り組んだ方は軽症を含めイップスになる方が多いですが、ほとんどの方が克服しています。
克服していない情報ばかりを学習して、あたかもそれが多いかの様に学習しない様にしてください。
治らないという学習そのものがご自身のイップスを治りにくくしているという事を客観的に認識する必要があります。
私たちの克服方法で実際にダンスイップスを克服したダンサーの例
上記までで、イップスの克服方法をお伝えしました。
そこで解決できる場合は、ダンスそのものがイップスに関わっていた場合です。
私たちが臨床でイップスの治療をすると、ダンスのイップスなのに、原因はダンスに関係のない。というパターンの患者様に出会う事があります。
この場合、ダンス以外の事に無意識的に脳が気を取られ、脳が不安定になっている事で、ダンスに支障が出ているともいえます。
その様な実際の例も交えながら実際の克服した一部の患者様の例をお伝えします。
大きな大会のステージ(本番)になると、足が思い通り動かなくなるダンスイップスを克服した患者様の例
ダンスのイップスに繋がる原因として、
- 執着心(信念)→わかりやすく音に合っているかというこだわり。その背景に過去、追いかけていたダンサーの踊りのイメージ(理想)と現在の自分(現実)のギャップ。
- 安心・安定(価値観)→会社を設立したが、本当にそれで生活できるのか?お金が回らない。世の中の需要と供給がマッチしなくて腑に落ちない。
この2つがイップスに繋がる様な脳の不安定性に影響していました。
本人がご自身の心の構造を理解した事で、イップスを克服しました。
体の脱力感があり、腕が挙がらず、踊れないと訴える患者様の克服例
踊りのイップスに繋がる原因として、
- 信仰心(信念)→踊りの師匠が所属している事務所に頼まれて、事務の仕事をしていたが、その会社の社長がどうしても合わなかった。でも師匠に頼まれているので辞められなかった。
- 競争心(信念)→過去、自主公演をした時により良いもをを追求して自分自身と戦っていた。しかし自分の中では悲惨で、見に来てくれた人に申し訳ない気持ちになった。
この2つがイップスに繋がる背景だと本人が認識し、脳が安定していった事で踊りのイップスを克服しました。
ダンスイップス・踊りのイップスを克服した患者様の声
・どのような症状、お悩みで施術をうけられましたか?
踊ろうとすると脱力とかで踊れない
・体験しての感想、他院との違いなど、書き方は自由です。ご感想をお聞かせください。
こういった方法の治療を受けたことがありませんでした。自分の無意識な部分と先生が会話してるみたいで、自分を否定されることなく、良い方向に進めて頂きました。
・今、身体の不調でお悩みを抱えている方で当院へまだ来院されていない方へメッセージをお願いします。
4年間本当に悩み続けていたことが解消されました。
ぜひ一度受けられるのも選択肢の一つだと思います。
名前 二宮 30代 女性 踊り 東京都在住
※結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
イップスの全体像の把握、それから克服法までご理解頂けましたでしょうか。
この記事を最後にまとめますと、
イップスとは、感情によって脳が反応し、脳からの命令に異常が生じるため、筋肉に異常が伴い運動障害がある事を言います。
イップスを克服するためには、
- ダンスイップスの引き金になっている、感情を把握する。
- その感情を引き起こす心の構造(心の奥底の構造)を把握する。
- その心の構造を強化した過去の記憶を把握する。
- その感情、心の構造、過去の記憶の一連のパターンがイップスに繋がっている事を客観的に認識する。
のステップでご自身と向き合う必要があります。
また、それでも治らない場合は、意味記憶が関係しているか、ダンス以外の事で脳が不安定になる感情が存在する場合もあります。
ご自身に向き合う習慣がない方ですと、とても難しいと思いますが、ご自身に向き合う事で、イップスも克服出来ますし、その後のダンス生活に楽しみや喜びが増すと思います。
もう一度この記事を最初からお読み頂きご自身に向き合って頂けますと幸いです。
また、万が一こちらの記事を実践してご自身に向き合っても症状が改善しない場合、心と脳と身体の関係性に着目した専門家へご相談される事をお薦め致します。
あなたの辛いダンスイップスが1日でも早く解決できる事を心から願っております。
最後までお読み頂きありがとうございました。
この記事の参考文献
- ジストニア診療ガイドライン2018:日本神経学会
- ジストニアのすべて:梶 龍兒
- 体の不調は脳がつくり、脳が治す:保井志之
- 「こころ」はいかにして生まれるのか最新脳科学で解き明かす「情動」:櫻井武
- コーピングのやさしい教科書:伊藤絵美
- 記憶と情動の脳科学:ジェームズ・L.マッガウ, 久保田 競, 大石 高生
- イップスの科学:田辺規充
- コーチング・クリニック:ベースボール・マガジン社
- イップス:澤宮優
- イップスは治る:飯島智則
- イップスかもしれないと思ったらまず読む本:河野昭典
- 薬に頼らず家庭で治せる発達障害との付き合い方:Dr.ロバート・メリロ
- 心身条件反射療法研究会資料